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2013年3月24日

2013.03.24

中小製造業、変化への対応

製造業は、内外の変化の激しさに、その事業の厳しさは続いている。
しかし、反面、この悪環境の中でも、自社の存在を明確にして、キチンと
した経営を実現している企業も少なくはない。
その特質への理解、そして、マーケティング変化とグローバル化の進展
への対応について、少し理解したい。

1.革新的中小企業群の持つ強さは
「地域産業・クラスタと革新的中小企業群」の調査から、幾つかのヒント
が見えてくる。
ここでは、以下の共通的な特質として、3要件を上げている。
①モノづくり組織能力の高さ
生産開発現場での統合力、生産性や品質を継続的に向上させる改善力、
これらの組織能力を長期にわたり深化せせる深化力の3要素が大きい。
②差別化した事業領域の設定
少数微量生産への対応、経験豊富な熟練技能工の存在、自前の特殊な
設備保有などの要因の企業が多い。
③受注力の高さ
顧客に積極的に提案するビジネスモデル化、安定的に受注していくための
受注モデル作り、全体をうまく動かすためのITの支援体制などを構築
している。
特に、③については、幾つかの成功事例がある。
・自社製品の開発
・サプライチェーン展開パターン
コアのモノづくり組織能力をベースに上流から下流の顧客に近い部分で
顧客志向の新しい付加価値を作り出す。
・次へのビジネスモデルへの展開
ネットワーク型の組織作りや広域連合化など
・超モノづくり組織能力型
特に部品メーカは自社の技術を徹底的に高めることで、オンリーワンとして
存在する。

2.モノづくり組織能力の高さ
①については、少し前に書いた「藤本教授の設計情報転写論」が基本
でもある。
設計情報転写論について、少し再掲し、確認をしたい。

藤本教授の考えるもの造りのポイントは、「もの」ではなく「設計」
である。もの造りの本質は、「ものを造る」ことではなく、設計情報を
「ものに造り込む」ことである。こう考えることにより、もの造りは
工場の生産現場だけで閉じたプロセスではなくなり、むしろ開発・購買
・生産・販売の現場が連携し、本社部門も経営トップも、サプライヤーも
販売店も顧客も巻き込む、一つの開かれたプロセスとなる。
このように、顧客に始まり顧客に終わる「設計情報の流れ」を管理・改善・
進化させる企業活動全体が「もの造り」に他ならない。従って、開発・生産・
購買・販売は全て、顧客へと向かう「設計情報の流れ」に関与しているわけ
であり、その限りにおいて、一丸となって「開かれたもの造り」を支えている
のである。
そして、「もの造りの組織能力」とは、顧客へ向かう設計情報の創造・
転写・発信のプロセスを、競合他社よりも常に正確に(高品質で)、効率
良く(低コストで)、迅速に(短いリードタイムで)遂行する組織全体の実力
を指す。いわゆるQCDの同時達成・同時改善を行う能力である。そこでは、
開発・購買・生産・販売それぞれの現場の組織能力が一体となって、緊密
に絡み合っている。淀みない「流れ」をつくることがその要諦である。

3.差別化すべき事業領域の設定
「どうやって儲けるのか」「競争がある中で、いかにして他社よりも優れた
収益を持続的に達成するのか」その基本的な手立てを示すものである。
その本質は「他社との違いをつくること」。その違いには2種類ある。
「種類の違い」と「程度の違い」となる。前者はポジショニング、後者は
組織能力を重視する戦略となる。第1項でも書いたように、革新的中小企業
には、どちらの要素も必要であり、「種類の違い」が明確で「程度の違い」
が強ければ最強となるが、この二つの間にはどちらかに偏る想いやテンション
があり、その対処が企業への挑戦的な課題になる様である。
後者の「程度の違い」は、第2項の設計情報転写論を企業の特質に合わせ、
深める必要があると思うが、この項では、前者の「種類の違い」を考える。
その基本は、コンセプトの明確化である。
コンセプトとは「本当のところ、誰に、何を売っているのか」「どのように」
よりも「誰に、何を」、そして「なぜ」が姿を現す。
コンセプトづくりに大切なことは、製品・サービスを本当に必要とするのは
誰か、どのように利用し、なぜ喜び、なぜ満足を感じるのか、をキチンと
把握すること。顧客価値の細部のリアリティを突き詰めるがある。
これは、次の受注力アップにも関係してくる。

4.受注力の高さ
ここ数年、研究会では、営業力アップをテーマに企業事例や各社の現況
などを討議してきたが、各社の想い、企業文化などの違いはその受注手法
にも大きく関係しているようである。
高収益企業としてのキーエンスの事例から我々も多く学んだが、それを
少しコメントしたい。

1)サービス事業としての徹底化
キーエンスでは、製造業としての単なる付加価値要素としてではなく、
全社ビジョンにサービス事業の考えが組み込まれている。
①基本スタンスの明確化
単にハードを売るのではなく、「生産性の向上を図る」というサービス価値
を提供する。
②社員での共通認識化
サービス提供が仕事への充実感(高給与も合わせ)を与えている。
③コンサルト営業としてのサポート体制
単に営業のコンサルスキルアップだけではなく、製造関係、開発担当も
必要に応じてサポートする体制がある。
④コンサルティング文化の醸成
コンサルティングサービスへの個人、社内での共有認識が出来ている。

2)営業意識の違い
多くの企業では、営業は売る人、製造は作る人の意識があるが、この意識変革
が必要となる。一番顧客接点の多い営業部門が積極的な製品開発に関わって
いないし、開発、マーケティング部門も営業の情報を参考にしない。
①製品の持つ価値をキチンと顧客に伝える。
社内開発部門との徹底した討議、勉強会の実施
②顧客ニーズの収集
単なる顧客の意見、想いを伝えるのではなく、顧客の潜在ニーズを広く深く
収集する事が重要と考えている。現場でのトラブル、課題などからそれを
コンサルする事で、新しい顧客ニーズを掴んでいく。

3)営業の基本スタイル
営業の仕事はセールスではなく、クライアントの話を徹底的に聴くこと。
特にその不満、不都合、不具合を可能な限り引きずり出すことに集中して
いる。しかもクライアント企業の現場で行う。これは、本当に工場責任者
たちが「キーエンス社の営業担当者は頼れる味方」だと異口同音に賞賛
している。
さらに、実際に困っていることを解決する提案だけでなく、「当たり前だ
と思っていた不便」を見つけ出し、「不便そうにされていますが、解決で
きますよ」と提案する。「“ハコ売り”ではなく“ソリューション”へ」
とソリューション=問題解決の提供の重要性は言われて久しい。しかし、
顕在化した問題ではなく、潜在的な問題まで引き出す対応をする。
「ニーズの深掘り」はマーケティングの基本である。

⇒多くの製造企業が学ぶべきことであるが、出来ていないのが現状。

5.グローバル化とサプライチェーンの薦め
製造業にとって厳しい状況が続いている。日本社会が衰退、老齢化していく
中では、グローバル化は必然の行動となる。このためにも、利益創出の軸
となるサプライチェーンのあり方を考える時期でもある。

利益率改善のためにサプライチェーンのチェックポイントを考える必要が
あり、自社ビジネスの“仕組み”をもう一度見直すべきである。

1)ボトルネックの1つが「サプライチェーンを構成する組織間連携の問題」
例えば、多くの企業において、製造部門と販売部門など、サプライチェーン
の上流側と下流側に在庫が滞留しているケースが多い。これは、製造部門が
販売部門の状況を把握し、それに応じて製造する体制になっていない。
サプライチェーンとは、調達・製造・物流・販売といったサプライチェーン
の各プロセスを担う組織が互いに連携・協調する取り組みが基本。自社の工場
や営業倉庫といった範囲だけではなく、物流会社、販売拠点といった、自社
以外の組織も含めて、サプライチェーン全体を見渡す視点を持つ必要がある。

2)もう1つのボトルネックは「ビジネスモデルの問題」であることの再認識。
「受注生産方式を取り、流通/小売業者を介さずに直接販売するというビジネス
モデル自体が、すでに利益を生み出すべく差別化されている」はずであり、
「まず利益を確保できるようビジネスモデルから見直し、サプライチェーンは、
その実現に最適な体制を考案することが重要となる。
そうした合理性を、サプライチェーン構成各社・各部門の連携体制だけではなく

現場のオペレーションにまで徹底させる必要がある。例えば、工場内物流に
おいて、製品の梱包作業場所と在庫保管場所が離れているなど、非効率的な
体制になっているケースが多い。そうした体制に、「ビジネスモデル実現
という目的にひも付いた、何らかの理由」がある場合は問題ないが、そのとき
どきの状況を受けて、明確な理由がないまま定着した自然発生的な業務体制、
プロセスとなっているものが少なくない。
「サプライチェーンの在り方、それを実現する製造拠点、販売拠点などの配置、
拠点間の物流体制・運用の在り方、さらには日々の業務プロセスまで、すべて
ビジネスモデルを基点に、あらためて見直すべきである。
サプライチェーンの連携体制を築くうえでは、ビジネスモデルの実現という
1つの目標に向けて、関連する全組織の動きを収束させる業績評価指標が不可欠
となる。

⇒中小企業では、上記の課題に加えて、システム化への対応の不十分さが
目立つ。全体最適にあわしたシステム作りとその運用体制が必要となる。

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