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2013年6月22日

2013.06.22

IT技術の進歩と我々の対応

最近のWeb関連の動きを見ていると、その進歩の加速度的な
速さに圧倒されると共に、自身の立ち位置の見直しを要請されている
ような気持ちにもなる。
そのような中、エリック・ブリニョルフソン氏共著の「機械との
競争」を読んだ。米国のデータとそこからの視点ではあるが、感覚の
不安をデータとして見せてもらえたのは、有難い。

1.「機械との競争」より
「なぜ米国ではそんなにたくさんの人が職を失っているのか。そしてなぜ所得
の中間値が1997年よりも低くなったのか」という問いから始まった。
イノベーションが進み生産性が向上したのに、なぜ賃金は低く、雇用は
少なくなったのか?
「デジタル技術の加速」のためである。それは生産性の向上をもたらしたが、
ついていけない人々を振り落としてしまった。ある人たちは多くのものを得て、
別の人たちは少ないものしか得られずに終わる。それが過去15年に起きたこと。
国全体の富は増えたが、多くの人にとって分け前は減った。残りは上位1%が
取っていったから。
考えなくてはならないのは、技術は常に雇用を破壊するということ。
そして常に雇用を創出する。問題はそのバランスであるが、その後、技術
による雇用破壊は雇用創出より速く進んだ。それがこの10年の現象という。
かつては生産性の伸びと同じように雇用も伸びてきたが、97年頃から
雇用が置いていかれるようになった。

その主因は、「デジタル技術の加速」にある。
デジタル技術には3つの側面がある。
1)指数関数的に発展するということ。人類の歴史に登場したどんな技術よりも
速く進化します。蒸気機関よりも電気よりも速い。ご存じの「ムーアの法則」
では、コンピューターの性能は18カ月で2倍になります。それは指数関数的な
スピード。人々はそれに追いついていけなくなっている。
2)デジタル技術は以前の技術よりも、より多くの人に影響を与えるということ。
今日、コンピューターの発展は、ほとんどの働き手に影響を与える。米国では
全労働者の業務のうち約65%が(コンピューターを使った)情報処理に関わるもの。
事務職、マネジャー、あるいは学校の先生、ジャーナリストやライターなど、
幅広い仕事がそれに含まれる。過去よりも多くの人が影響を受ける。
3)ひとたび何かが発明されると、ほとんどコストなしでコピーができる。
そしてそのコピーを即座に世界のどこへでも送り、何百万人という人が同じもの
を手にすることができる。高いお金をかけて工場を建設しなければならない製造業
などとは全然違う。過去200年とは全く異なる影響を雇用にもたらす。

雇用は中国に移ったのではない。ロボットに移った
製造業は米国では縮小してきました。それはまた別の重要な論点を生む。製造業
における米国の雇用縮小の背景として、生産拠点の海外移転や中国の台頭が
挙げられてきた。
しかし、調査の結果、分かったのは、中国では製造業で働く人が97年に比べ
2000万人以上少なくなっているということ。雇用が米国から中国に移った
のではない。米国と中国からロボットに雇用が移ったというのが正しい。
「デジタル革命」や「機械との競争」は、生産の海外移転よりももっと重要
な論点のはず。
テクノロジーと経済は非常に速く変化している。もし我々が何もしなければ、
危機に陥り、多くの人が仕事を失うことになる。しかし、うまく対応できたら、
つまり技術の利点を取り入れることができたら、すべての人にとってチャンス
を生み出せる。

日本の雇用状況や経済状況を見る上においても、示唆のあるデータや
コメントがある。

2.見えていないが、深化しつつあるクラウドをもう少し理解する
「クラウドかする世界」で著者のニコラス・カー氏は、
「インターネットは、情報収集からコミュ二ティ作りに至るまで、あらゆることを
簡単な処理に変えて、大抵の事は、リンクをクリックするだけで表明出来る様
になった。そうした処理は、1個1個は単純でも、全体としては、極めて複雑だ。
我々は、1日に何百何千回というクリックを意図的に、あるいは衝動的に行って
いるが、そのクリックの度に自分自身のアイデンティティや影響力を形成し、
コミュ二ティを構築しているのだ。我々がオンラインでより多くの時間を過ごし、
より多くのことを実行するにつれて、そのクリックの複合が、経済、文化、
及び社会を形作ることになるだろう。」
と述べている。

最近の日経BPのレポートより、クラウド活用の視点から
IT技術を上手く活用すれば、違う広がりもある。「機械との競争」とは、違う
視点でも、見る必要があるのかもしれない。
1)人のつながり
働き方の改革に関して日本で主に議論されるのは人の流動化だが、1人
が一組織に長期間所属する「正社員」があるべき姿で、その機会を全員に与えよう
とするとなかなか解を見出せない。
長期間雇用されるかわりに様々な仕事をする正社員と、パートタイマーやアルバイ
ト以外にも、色々な働き方がある。企業に所属するが、仕事の内容、労働時間、
勤務場所などについて取り決めてから働くやり方もあれば、専門能力や人脈
を活かした「1人企業」(個人事業主)として働く道もある。
1人が一組織だけではなく、複数の企業やチームあるいはNPO(非営利組織)に
参加して仕事をする「双職」もある。個人と仕事のつながりは今後増えていくと
予想される。
日本の「個人と仕事のつながりの総数」を推定したところ、現在の「7181万」
が5年後にほぼ2倍、「1億2700万」に増える結果になった。日本の就業者数
6246万人を上回っているのは、すでに複数の働く場を持っている人が
いるためだ。
つながりの総数は次のように算出した。調査回答者に「今、働く場をいくつか持っ
ているか「5年の間に、いくつにしたいか」を聞き、各世代ごとに働く場の数の
平均値を求めた。各平均値を世代別の人口に乗じて、世代別のつながり数とし、
これらの合計を総数とした。
つながりの増加は日本経済を活性化する。企業や組織は新たにつながる人の知見を
活用し、組織間の壁を越えて新しい取り組み(イノベーション)を始められる。
さらに組織につながっていなかった女性やベテラン(高齢者)は働きたい時に
その力を発揮できるようになる。

2)クラウド利用はこれから
個人と仕事のつながりが増えるにあたっては、情報通信技術(ICT)が貢献する。
モバイル機器さえあれば、インターネットにつなぐだけで仕事に役立つサービスを利
用できる環境がすでに整っている。
チームで取り組んでいる仕事の進捗や成果物の状況をメンバー同士が把握できる
ようにするサービスや、販売管理や顧客管理といった業務処理サービスを提供する
クラウドが用意されている。
仕事を支えるクラウドの認知や利用率はまだ低いが、使いたいという意欲はあり、クラ
ウド利用はこれからが本番と言える。
クラウドの利点は事前に用意されたサービスをすぐ使えること。必要なサービスがなけ
れば自分で開発し、それを新たなクラウドにして他者に提供し、職場を増やす「贈職」
もできる。
サービスを実現しているのはアプリケーション・ソフト(アプリ)である。「クラウド
を使ってアプリを開発してみたいと思うか」という質問に対し、「すでに試みている」
(1・1%)、「ぜひやってみたい」(6・5%)、「どちらかというとやって
みたい」(26%)という回答があり、合計すると3分の1が前向きであった。

3.日本企業でのクラウドへの取り組み
一般的に、多くの日本企業は、新しいテクノロジが登場すると、「現行のシステム、既
存の業務にとっての意味」を考え始める。また、既存の考え方で、新しいテクノロジを
理解しようとする。結果として、クラウド・コンピューティングについても、新しい価
値を理解できない状況になっている。一方のベンダーやインテグレータも、そのことが
わかっていることもあり、あえて、テクノロジの価値を語らず、業務の課題を聞くこと
からスタートする。結果、テクノロジ価値についてはユーザーから見ても見えにくい状
況になっている。
こうしたことは、日本におけるITの成熟度が高まらない一つの大きな要因と
なっている。テクノロジの進化、主要ベンダーの取り組み、先進的ユーザー企業のビジ
ネスの考え方などから、これからの企業情報システムの姿を考えると、今の形は、抜本
的に変化することが推察できる。
現在、ばらばらに語られている、クラウド、ビッグデータ、モバイルなどは、全て融合
することで、非常にインパクトのある、ITの循環モデルを形成する。そこでは、大量の
モバイルやセンサーからのデータストリームが、ネットワーク経由で、次世代のデータ
センターに入り、そこで、スーパーパワー(巨大な性能値とキャパシティ)により自動
処理され、リアルタイムに解析され、インテリジェンスにより、自動的に解が
導かれる。
さらに、自動的に、アクションとして、サービスやデータが配信され、それがネット
サイトや、デバイスに送られ、ユーザーに新たな経験をもたらす。
こうした仕組みができると、企業ビジネスは根本から変わることになる。
クラウドに関わるベンダーは、こうしたことを総合的かつ戦略的なものとして
取り組むことが非常に重要になってきている。
日本では、シェアビジネスのような、身近で、クラウドやスマートデバイスを活用
したビジネスが中々、浸透しないが、アメリカでは、スマートフォンによるシェア
ビジネスの拡大が様々な形で進行している。
・食料品の買い物代行(注文を受けてから1時間以内の配達)
・用事代行(契約スタッフと顧客を即時マッチングさせる)
・修理代行(トラックで顧客が指定する場所に出向く)
・個人間のカーシェアリング(個人間の車のレンタルのマッチング)  など等

ユーザーは、IT業界の競争は、かつてないテクノロジ競争になったことを再度
認識するとともに、数年後に向けたビジネス・イノベーションの準備を
開始すべきである。

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