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2013年9月28日

2013.09.28

伝統工芸品を売る!!

今も何社かの伝統工芸品を自身の生業として頑張っている企業との
お付き合いがある。時代の変化は、大量均一の顔の見えない商品、製品
から手作り感のある商品、製品へのニーズと大きく変わりつつある。
日常的に使う道具的なモノに対しては、100円ショップで懸命に
購入すると思えば、only-oneとしてのモノに対しては、大きな出費と
思わずに購入する2極化した購買購入も当たり前のように存在する。
最近は、手作り品、伝統工芸品への需要の高さが更に高まっているように
思える。
しかし、伝統工芸品を作っている方々の多くには、商品、製品を売ること
への意識と行動がまだまだ、不足している様でもある。

1.その現状は
伝統工芸品を世の多くの人に使ってもらいその良さを理解してもらおうと
頑張っている人も少ない。しかし、まだまだ、「製品を売るということについては
意識が希薄だ」と感じられる。その背景には、伝統工芸というブランドに
固執し、現代の生活環境の変化を意識しないもの造りをしている職人が多い
という課題もある。
当然、職人の中には市場を意識した伝統工芸に取り組んでいる人たちもいる。
こうした意欲の高い「職人芸」を支援しようとする活動も増えている。
しかし、公的機関から補助金をもらって、デザイン開発など様々な新規プロジェクト
を始めているものの、それがどれだけ販売増に結びついているのかという
課題も十分解決されたとは言えない。
実際、地域再生の大義名分の下、国や地方自治体等から補助金が出て、それを
業界団体の組合が受け取り、広告代理店等に丸投げし、奇抜なデザインのお
碗や器を造り、マスコミで一時的に話題をさらうだけで終わりといった感じの
プロジェクトも良く聞く。
更に、このようなやり方は、行政の財源の確保が難題になりつつある。中小
企業基盤整備機構では、伝統工芸等の事業計画作成支援を行っていたが、予算
が半減したと言う話もある。
また、経済産業省の製造産業局が管轄する財団法人伝統的工芸品産業振興協会が
あるほか、文化庁も伝統工芸の振興に関与している等の「省庁の縦割りの弊害
ある」と指摘されている。

多くの地方自治体の支援策は、業界団体等に「平等」「まんべんなく」をキーワ
ードとして補助金をばら撒く、「延命措置」的なものが多かった。今後は、やる気
のある企業のみを支援すると言う意識改革も必要となる。税金を投入する
以上、雇用や税収で効果が期待できない企業に支援しても、税金は生きたカネ
にならないとの判断すると同時に、「甘え」の構造を排除する事も必要となる。
「バリュー・フォー・タックス(税金の付加価値)」という考えがある。使った税金
からどのような付加価値が生まれるのかという考えだ。行政が民間の経営
手法を導入する場合、こうした考えも必要になるはずである。
支援する側、支援される側、いずれも、意識の変革が迫られている。

2.伝統工芸品を売る、その事例から考える
全国各地には、若い人を中心に、伝統工芸品を現状の市場、顧客ニーズ
にあわして、ITを活用しながら、成果を上げている企業も増えている。
その活動事例から我々のやるべきヒントがあるように感じる。

・伝統工芸品を中心に、頑張っているあるベンチャー企業の活動
セレクトショップを東京に開設した。約70坪のミッドタウン店では全国47
都道府県の約2500点の伝統工芸品等を販売。感度が高い主に30-50歳
の女性客をターゲットにしている。1日平均で1000人程度が来客し、
そのうち約10%が外国人という。年間に約2億円を売り上げるとの事。
この店舗の特徴は2つある。まず、「有田焼」などといった商品の産地や
ブランド表示をしないこと。次に家具と食器をコーディネートするなど
全国の産地の商品を組み合わせ、ライフスタイルを提案する方式。
顧客に商品そのものの実力を問い、購買意欲を喚起する狙いである。

販売については、その企業が厳選する。現代の生活に必要かなど、
顧客目線を大切にしている。(行政や職人が全面のビジネスでは、
この点が弱い。)伝統工芸だからといって、今の消費者は甘くない。
消費者のニーズをとらえるというのは当り前のことだが、それが
出来ていない場合も多々あるとの事。
更に、販売だけではなく、コンサルティング支援も行う。産地に直接
出向き、顧客目線で本当に売る気があるのかも確認する。デザイナー
が新商品開発の宿題を出し、その課題にどう取り組むかといった姿勢
を見る事もある。
一般的に伝統工芸品は、生産者→産地問屋→消費地問屋→店という流通
形態を取っており、顧客情報が生産者に伝わりにくいといった構造的な
課題もある。また、手間隙をかけて職人芸で良い商品だけを造って
いれば売れるという意識も強い。
もちろん伝統や技にこだわる職人芸は必要だが、「良い商品」とは何か
を意識する時代である。
職人芸と市場を融合させる時代が来ているということなのだ。
また、資金的には、前述のように、補助金の利用実態は必ずしも効果的
ではない。自分が稼ぎ出した金ではない補助金頼みでは、投資効果等
の考え方も薄らぐ。産業自体に一種の「甘え」の構造もある。

3.その他の取り組みと支援策
上記の企業と同様の考え方で、個人や組織で伝統的工芸品の優れた品質やデザイン
に着目して、一段と商品力を向上させたものや流通経路を見直したことで、
従来の顧客層とは異なった需要層を獲得した例が数多くある。
これらの産業界独自の取り組みに加えて、法律での支援策も充実してはいる。
事例をあげると次のとおり。
①デザインやブランド力を活用して新しい市場を獲得しているもの
「大館曲げわっぱ」、「博多織」など
②新技術との融合による新しい需要を開拓しているもの
「美濃焼」のリサイクル食器、「木曽漆器」の給食用容器など
③従来の技法と品質にこだわっているもの
「芭蕉布」、「輪島塗」など
自社の伝統的工芸品をどのような方向に向かわせるのかは、内外の環境を分析して、
自社製品の強みを加味したマーケティングの考え方をもつことが重要である。
また、国の支援策としては、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」
(「伝産法」)に基づいて、様々な支援策がある。
このような支援に安住することは好ましくないが、事業の起点として活用することは
必要でもある。
ちなみに伝統工芸品の指定条件は以下の通りである。
・日常生活で使われている工芸品である
・手工業である
・技術、原材料が100年以上受け継がれている
・一定の地域で産業として成り立っている。

支援策の色々
①後継者育成事業:後継者育成研修など
②需要開拓等事業:需要開拓など
③地域人材育成・交流支援事業:人材育成、消費者との交流の推進など
④地域活性化事業:活性化計画、連携活性化計画に基づく、活性化事業
および連携活性化事業
⑤産地プロデューサー事業:支援計画に基づき産地プロデューサー自らが産地に
入り込んで、新商品開発・販路開拓などに関わる事業

自社や産地独自の継続的な取り組みと国の支援策をミックスして、需要開拓に
挑戦してもらいたいものである。
外国人の多くは、日本に来たら漆工芸の何かが欲しい、浮世絵が欲しいなど
知識の豊富さとそのニーズは高い。日本の伝統工芸士の多くは大企業ではなく、
中小、小規模企業がほとんどであり、マーケティングのノウハウや、販売方法、
ましてや海外戦略などは自社内ではなかなか手が回らないのが現状でもある。
しかし、行政とやる気のある民間企業がその伝統工芸をきっちりと束ね、
ALL JAPANとして、今までにない販路を見出すことができれば、売り上げも上がり、
次世代の職人養成が可能となり、さらには伝統工芸技術の継承にも役立てる
ことになる。

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