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2014年2月22日

2014.02.22

社会基盤化するクラウド、更に深化

最近、幾つかのクラウド関連の話を聞いたり、状況確認をしたりした。
ビジネス向けでは、中小企業での活用は、Saasでの顧客管理、会計関連、
業務処理などのアプリ関連を中心に、使用の範囲は広がりつつあるが、未だ十分な
活用とは言えない。しかし、中堅企業以上では、パブリッククラウド、
プライベートクラウドに関わらず、競争力の源泉として、その活用は、深まっている
様である。そして、その進歩は、急激である。
更に、医療や1次産業などの社会基盤に近いところでも、その活用が進み始めている。

1.医療関連でのクラウド活用
IT化の遅れが指摘されてきた医療分野であるが、地域医療の連携が切実に求められる
ようになったことで、IT導入の機運が一気に高まっている。住民の高齢化や過疎化、
医師の偏在などで地域医療を取り巻く環境が大きく変わってきたためである。
病院や薬局などが単独で機能するのでは限界があり、病院などが互いに補完し合い
ながら質の高い医療を提供するという動きが加速している。政府も、医療業界の動きを
後押ししようと打ち出した成長戦略に地域医療介護連携ネットワークの推進を
盛り込んだ。

医療業界でこれまでにない取り組みとして注目されているのが、病院や事業者が
クラウドを通じて電子カルテなどを相互に共有する新システムである。既に、
石巻・気仙沼地域(人口約29万人)で70施設以上が参加し仮運用が始まっている。
今後2~3年をかけて県全域をカバーするのが目標との事。
このシステムでは、情報共有に同意した患者一人ひとりに独自の16ケタのIDを割り
当てる。その上で、各病院や施設の利用者番号などと関係付ける。過去にどんな病気に
かかり、どの病院でどんな治療を受けたかが分かる。これらの情報は従来なら患者本人
の記憶に頼るしかなかったが、今後は医師がデータベースから簡単に引き出せるように
なる。少しづつながら、顧客(患者)視点での動きとなるのであろうか?
宮城県の取り組みで旗振り役を務めるのが「みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会
(MMWIN)」と呼ばれる団体であり、災害に備え患者情報を共有しようと宮城県
や医師会、大学病院などが中心になって2012年に発足した。
同県の関係組織が一丸となって情報共有に動いた直接のきっかけは、震災時に苦い
思いをしなければならなかった経験にある。津波でカルテや利用履歴を喪失する病院
が相次ぎ、生存者の既往症や薬の処方歴を確認できなくなった。医師が手を出せず、
亡くなった人も多かった。
この他、幾つかの県レベルでの動きも加速している。
「あじさいネットワーク」は、ITによる地域医療連携でもう一つの先進事例。
2004年に特定非営利活動法人(NPO法人)、長崎地域医療連携ネットワーク
システム協議会(長崎市)がいち早く立ち上げた。現在は県内21の基幹病院と198の
診療所や薬局がつながる国内では有数の広域ネットワークとなっており、地域医療
連携を模索する医療関係者なら必ずといっていいほど一度は視察に訪れている。
あじさいネットワークは異なるシステムを連携させることが特徴である。
ポータル(玄関)サイトを開くと、富士通のシステム「ヒューマンブリッジ」を
使っている基幹病院とNECの「ID-Link」が入っている基幹病院が並んで
表示される。
診療所の医師はシステムの種類を問わず、病院の情報を見られる。
これは、病院や診療所が互いにカバーし合いながら、地域全体で患者を診ていこうと
する流れが強まっているからであろう。
クラウドというソリューションを使うことで更に進化できる。

ただ課題も残る。専門家やIT企業の担当者が指摘するのは技術面ではなく人や
組織の問題であり、地域の医療関係者らの心を結束させることの難しさである。
一部の医療関係者が連携を急いでも、参加する医療機関が増えなければその機能は
果たせない。成功している事例では、先ほどの2例も含め、組織を横断する人の
ネットワークをまず創ったことにある。
地域医療連携は様々な可能性を秘めている。個人情報の保護が前提になるが集まった
膨大な医療データを解析すれば、効果的な治療法や予防法などの普及を後押しできる
かもしれない。医療費の削減効果への期待も大きい。ITに不慣れな診療所などでも
導入しやすい安価なシステムを提供できれば、地域医療連携の裾野はもっと拡大
するはずであり、そのポイントは、クラウドにあるのかもしれない。
立ち上がりも早く、共通化もし易い基盤を上手く使って、関係メンバーの意識化
が可能でもある。

2.農業関連でのクラウド活用
農業関連でも、個別のシステム化、業務効率化から一歩進んだクラウドを基盤とした
進化を見せつつある。

富士通は、農業向けSaaS「Akisai(秋彩)」について2014年は利用が本格化する年と
位置付けている。1月22日に開催した記者説明会で明らかにした。
2012年10月のサービス開始から1000社超の問い合わせや引き合いがあり、現在は160
社(有償利用92社、トライアル・実証利用68社)が利用中という。同社は、2015年度ま
でに事業者数2万、売り上げ累計150億円をサービスの販売目標として掲げている。

Akisaiは、企業的農業を経営、生産、販売まで支援するSaaSであり、露地栽培や施設
栽培、畜産をカバーする。農業生産者の生産性向上だけでなく、食品加工や卸、小売り
、外食企業などが生産物の品質管理や受給調整などに利用することも想定する。
たとえば、有償利用92社の事業別内訳は、農業生産法人25社、流通小売り24社、JA関連
8団体、自治体9団体、そのほかに種苗や資材のメーカー、研究機関が26となっている。
「トライアル利用から有償利用に移るケースが増え、2014年から利用が本格化する」
との事。
このうち、農業生産法人については、宮崎県の新福青果、滋賀県のフクハラファーム
、和歌山県の早和果樹園、福岡県の幸寿園・日高農園、大分県の衛藤産業、静岡県の鈴
生の6社の事例が紹介されている。

■宮崎県の新福青果では、キャベツを植えた日からの積算温度をもとに適切な収穫時期
を予測している。定植予定日を厳守し、栽培計画に沿って適切な作業を行うことで、
キャベツ収量と売り上げを前年比30%アップを達成という。
■滋賀県のフクハラファームでは、無農薬の有機栽培米や大豆、ブドウ、イチジクなど
を生産している。田植え作業の工程を分析し、手作業での田植えなど時間のかかる作業
を行わないなどの効率化を進め、2年間で総作業時間を500時間ほど削減し、10アールあ
たり0.47時間の能率アップにつなげたとしている。
■和歌山県の早和果樹園では、ミカン園に設置したセンサからデータを収集し、果樹
試験場から遠隔アドバイスを受け取ることで、高糖度ミカンの比率を3年間で3倍にする
ことに取り組んでいる。樹木1本ごとにIDを付与して園地を見える化し、スマート
フォンを使ってアドバイスを受けている。
■福岡県の幸寿園・日高農園は、花卉(かき)栽培で特定品種の栽培ノウハウがない
幸寿園の経営者に、日高農園の指導者が遠隔から栽培のアドバイスを行っている
ケース。「施設園芸SaaS」で環境情報を統計的に共有でき、的確な指導と問題を共有
できているという。
■大分県の衛藤産業は白ネギや白菜、キャベツなどを栽培している従業員16人の企業。
Excelで行ってきたコスト集計や写真データの管理を「農業生産SaaS」に移行し、作業
状況の見える化や生産原価の把握に役立てている。サービス利用後、売り上げ高は前年
比1.3倍になり、肥料代も約30%を削減。原価を把握することで、流通側からの値下げ
圧力に対抗するなど、価格交渉力を向上させたとしている。

流通小売りの事例としては、全国で12農場、合計140ヘクタールの直営農場を展開
するイオンアグリ創造の事例が紹介された。イオンアグリ創造の代表取締役社長の
福永庸明氏は、富士通との取り組みについて「直営農場の生産データや店舗情報、会計
データなどを組み合わせ、経営や生産を見える化する。農薬や肥料の使用記録を管理
して店舗に届けるといったように品質の見える化にも取り組む」と解説。将来的には、
農作物の輸出も視野に入れていくとした。

農業関連では、若い起業者が従来にない発想で、様々なビジネスを仕掛けている。
しかし、旧来からの農業関連者は、いまだ、既得権益などに縛られ、新しい環境変化
に対応出来ていないのが、現状であろう。むしろ、クラウドなどの新しいインフラを
積極的にビジネス展開できるソリューションベンダーなどがまとめて行くのも、一つ
の解決策かもしれないのでは。
同様の動きが漁業関連でも出てきている。

3.漁業関連のクラウド化
漁業で注目されるのは経団連を事務局とするジャパン・クラウド・コンンソーシアム
(JCC)が推進する「水産業クラウド」実現への取り組みである。「日本の水産業の
高収益化とブランド競争力の向上を通じた経済の活性化」を目標に水産業クラウド
検討会を設置した。
(1)次世代型の日本の水産業の検討、(2)魚価を上げるための仕組み、(3)新しい
水産業のマーケティングについて研究する。

ここでも、まとめ役はソリューションベンダーである。
日本IBMは「現在はビジネスモデルを一緒に評価してくれる業者を探している段階
」であり、宮城県石巻市雄勝町や岩手県久慈市で、クラウドを活用したトレーサ
ビリティ・システムの構築を地域業者らと話し合っている。
狩猟型の漁業はモノづくりとは一線を画す。特に日本の漁業は沿岸での定置網
漁業が主体であり、収穫量は日々の天候に左右される。このため水産業クラウド検討会
では魚の水揚げから消費に至るサプライチェーン全体を通じた収益モデルの確立を
目指す。
通常、定置網漁業で水揚げした魚は、バケツ単位で仲買人が言い値で競り落とす。
その際、値が付くのは売れ筋の魚だけであり、名が知られていない魚や形が小さい
ものはその場で捨てられるが、きちんと仕分けし商品化すれば収益源になる。
水産業クラウド検討会ではそこに目を付け、飛行機を用いた高速物流やRFIDによる
トレーサビリティにより、これまで捨てていた魚を加工してインターネットで
販売する仕組みを検討中。「売れ筋の魚は従来通り仲買人を通せばよいが、
小さい魚などは現地で加工すれば売れる」と考えられる。

ポイントは生産者のこだわりや「今の時期は養分があっておいしい」といった商品
価値をFacebookなどを通して消費者に伝えること。魚や加工品を運ぶ保冷箱に
RFIDタグを貼り付ければ、水揚げ時の生産情報や輸送時の温度状態などを追跡管理し、
鮮魚の品質を保証して消費地に届けることも可能だ。
以前のブログ記事にも書いたが、上記に近い先進的なビジネスは、一部のメンバー
では、推進されているものの、まだまだ、部分的なものである。
先行事例などを上手く取り入れ、クラウドという基盤を上手く使って、更なる進化を
期待したいもの。

農業と漁業は、いずれも自然が相手ゆえに収益が不安定なうえ、若者に人気がなく
後継者問題を抱える。状況は似通うが、寄って立つ市場構造は異なる。農業では限ら
れた土地の中でいかに収穫量を増やし、品質を改善するかが問われる。これは日本が得
意なモノづくりに通じており、ICT活用にも馴染みやすい。
農地にセンサネットワークを張り巡らし、土壌の水分量や葉の湿り具合、気圧などを
測定・解析。作物の成長に合わせて肥料の追加や農薬散布ができる。ハウス栽培などの
施設園芸ではICTを駆使した植物工場も登場している。
植物工場・施設園芸の日本発の標準モデルを構築するために「スマートアグリ
コンソーシアム」を立ち上げられた。

4.地域での協働化とクラウド活用
地域活性化として、多くの自治体では、「行政、地域住民、事業者」による3者協働
事業を進めている。更に、社会基盤としてのクラウドの深化が強まる中では、医療に
限らずこの3者を上手く結びつけることが可能でもある。しかし、多くの事例では、
住民と行政の感覚的な話し合いや討議はあるものの、具体的な事業推進は、行政任せ
になったり、そのまま、討議だけで、自己満足して終わるのが大半である。

少し前の記事にも述べたが、行政の持つデータ、情報は、膨大であり、その使い道は、
多種多様でもある。ここで、少し発想を変えて、クラウドという社会基盤と住民が
必要とするデータ、情報があると言う前提で、協働化を進められないか?と
最近、思う。
社会ニーズを明確にする人(地域での発言者とコーディネータ的に動ける人)が
オープンな形で地域賛同者に問いかけ、それを行政、事業者が形にして行く。
1項の医療が、正に、その姿でもある。医療の閉鎖性の打破と患者のメリットが明確
であるから、進んだこともあるが、これは、農魚業のこれからのビジネススタイル
としても、本質は、同じであろう。
「3者協働+クラウド基盤」、少し考えて行きたい課題である。

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