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2014年3月8日

2014.03.08

3Dプリンター活用の企業の今、そしてこれから

今、旬な技術として、あちらこちらで、3Dプリンターの話題が出ている。
永らく、製造業に携わった人間としては、モノづくりに多くの人が興味
を持ち、モノを創ることの喜びを感じてもらうことは、喜ばしい。
しかし、3Dプリンター(少し前までは、この名前も違っていた様であるが)
を自社のビジネスに以前から適用できるとして頑張ってきた企業も少なからず
おられる。その意味では、先進企業と言われる方々である。前回の投稿では、
全般的な3Dプリンターについての話をしたが、今回は、この辺を中心に、
少しフォローしてみたい。

1.3Dプリンター活用で、頑張ってきた企業
1)株式会社十川ゴム
「デジタルエンジニアリングによる提案型開発」を3Dプリンタにて実施してきた。
①基本的な考え方を関係メンバーが述べておられる。
「それまでは、私たちのお客様である完成品メーカーが部品の設計までされていて、
お客様からのご指示通りに作ればよかったのですが、少量多品種化の影響から
設計部の仕事が増えたためか、部品の設計を我々部品メーカーにご依頼いただく
ことが多くなってきました。そのため、これまでのように受け身で待っている
姿勢では通用しないことを実感し、自らさまざまなアイデアを出す「提案型
企業」に変化しなければならないと思いました。
更に、自動車、家電や住宅設備など、様々な製品で市場の変化に対応すべく
頻繁にモデルチェンジを行うようになり、そのスピードに追随しなければ
ならなくなったことです。」
求められる提案力、頻回なモデルチェンジへの対応。積み重なる課題に研究
開発部は対応策の一つが3Dプリンタの導入であった。
サンプルモデル造りが自社ですぐにできることで、提案のスピード化にも
つながるだろうと考えたのである。
そして、2008年春、「Dimension(ディメンジョン)」を導入する。
更に、治具の種類と製作期間の短縮化のために、「生産ライン」にも3D
プリンタ-を活用しようと考えた。設計時に使ったホースの3Dデータを
治具製作用に加工して3Dプリンタで造形。スピードは大幅に短縮された。
更に、3Dプリンターの適用を検討している。

2)株式会社クロスエフェクト
光造形、真空注型による「高速試作」を主サービスとして、 24時間以内の
世界最速のモノ造りを目指し限られた時間内での開発を徹底的に支援している。
光造形は、3次元CADデータを元にレーザー光線と光硬化性樹脂を用いて積層
造形し、3次元CADでデザインされたモデルと寸分違わない実物モデルを短納期
に作成する。より速く、より微細な立体モデルを造り出し、開発期間の短縮、
コストの圧縮などさまざまなメリットをご提供している。
また、真空注型はマスター(光造形や切削加工品)をもとにシリコーン型で複製する。
意匠面の確認や金型製作前の検討用モデルとして短納期かつ安価に製作出来る。
これら基礎技術に加えて、「企画・設計段階からサポートするRapid Design
による高速デザイン・設計技術」で速いものづくりを目指している。
特に、心臓シミュレーターは、その精度とスピードにおいて、高い評価を受けている。
更に、20数名の会社ではあるが、IT経営推進を実践し、社員との「目的と目標
の共有」をはかっている。スマートフォン、グループウェア、Webなどのデジタル
を最大限活用する事で会社を変えるという明確な方向性を打ち出し、他社には真似
のできない卓越した時間及び原価管理システム等を構築してきた。

3)株式会社ジェイ・エム・シー
3Dプリンタを使ったクラウドファンディングによるたRAPIRO(人型ロボット
作成キット)開発を推進した。中小企業4社連携でのプロジェクトである。
このキットを製品化するためクラウドファンディング「KickStarter」で公開したとこ
ろ世界中のメディアに掲載され、公開から12時間で目標金額20,000ポンド(約300万円)
の半数を達成し、最終的に1,260万円調達した。
このキットは、「ここまでこう動いた方が、ロボットマニアにも訴求するのでは」と
いうところまで考えて、設計しているとのこと。その設計では、3Dプリンタで繰り返し
試作品を作成し、3Dデータも公開し、3Dプリント可能な製品にしている。
13年前から3Dプリント事業をおこなう老舗メーカーであり、3Dプリンタの
オペレーションを10年間経験した作業者として頑張ってきている。

4)株式会社 東京マルイ
東京マルイは、エアソフトガン業界でトップシェアを誇る企業である。
「多くの人が手に取って、動かして遊ぶホビーを造る――」このモットーは
世間の信頼を得てこそはじめて実現する。どのような状況においても、
この考えを守り通し、工夫と知恵を絞ってきたところに、東京マルイの企業
としての強さがある。
「エアソフトガンは、プラスチックと金属の2つの材料を組み合わせて製造します。
試作品は、それぞれ別々の専門業者に外注していました。納品される試作部品は、
NC加工によって製作し、キレイで完成度も高いものに仕上がるのですが、製作
コストが高く外注費がかさんでいました。また、寸法確認や組合せ等を検証した
結果、設計図面に少しでも修正が入ると、修正の程度にもよりますが、それを
反映し再度試作を外注しなければなりません。ということは、前の試作品に
かかった外注費用は全て無駄、期間も倍かかる、ということになってしまいます。
そのため、図面が完全になってからでないと試作品作成に進めないのです。」

効率よく試作品を作れる環境を整えたい。それができれば、これまで以上に
新しい商品をお客様に提供できる。そんな想いから東京マルイでは、この問題を
解消するシステムを探し始め、3Dプリンタ Dimension(ディメンジョン)の導入
を決めた。
Dimensionはモデル材料にABS樹脂を使用する。このため、複雑かつ強度を必要と
するエアソフトガンの内部部品の動作確認でも、問題なく機能する。金属部品と
ABS樹脂部品を組み合わせて、試作品を作り、動作を検証する。
「Dimensionで出力した試作エアガンを動かしてみると、動き具合や身体に伝わる
衝撃の大きさなどが、実製品にかなり近いのです。そのため新しい製品の動きを
開発の途中段階からシミュレートできるようになった。」

5)ひとり家電メーカーの誕生
「真・善・美」の精神で世の中を変えるモノ作りを目指すBsize(ビーサイズ)株式会社
・事業概要
「家電メーカー」として、企画を立てて家電製品をデザイン・設計開発・評価検
証をし、ブランディングから販売に及ぶまでを代表一人で行っている。
・第一弾製品となったSTROKE(ストローク)
モノ本来の色を忠実に再現し、目に優しく自然光に近い光を取り入れたLEDデスク
ライト。鉄とアルミから成る細いパイプ1本を曲げただけのシンプルなデザインと
リサイクル性が高く省エネルギーで長寿命な設計にこだわった。
・ビジネスの現状と展望
「デザインとテクノロジーと社会貢献」をミッションに掲げている。ギリシャ
哲学「真・善・美」=「学問と道徳と芸術の追求」からヒントを得たものであり、
デザイン(芸術)とテクノロジー(学問)と社会貢献(道徳)の全てがそろった
モノづくりをしていくことが、何百年たっても「いい商品だね」と言ってもらえる
普遍的な価値をユーザーに提供し、世の中を良くしていくことにつながると
考えている。
創業時から最近まで、組み立てから発送まで一人で行っていたが、注文が伸び始め、
製造台数を増やすため、今は近くの工場に組み立てを外注している。

2.3Dプリンターのこれから
1)3Dデータの拡大
Meticulous(メティキュラス)」という言葉がある。日本人気質を欧米人が揶揄する
ときとかに使う。神経質すぎるとか、重箱の隅をつつくとかそういった意味である。
日本のものづくりは、こだわりがある。こだわるから完成度の高い製品ができる。
Meticulousだからできる。そのこだわりを製品開発の初期というかアイデアの段階
から引き出せるのが3Dプリンターと考えられる。

3Dプリンターで部品を作ることで、その部品を制作するための金型を作る必要がない
というメリットはあるが、これは、特に進化の著しい製品や小ロットの量産製品に
おいては有効となる。こういった製品は性能を向上させるために、頻繁に設計変更
がかかり、金型を作ってしまうと、設計変更のたびに金型を補修しなくてはならない。
このコストはバカにならない。
また、頻繁に交換が生じるような消耗部品にも有効。部品の3Dデータは自社のWeb
サイトなどを通じてユーザーに提供してしまう。そうすることで、その消耗部品に
交換が生じた場合には、ユーザー自身が3Dプリンターで制作できるようになる。
メーカーとしては、金型を保有する必要がないばかりか、部品を在庫として持つ
必要もなくなる。
このため、3次元データの拡大もしっかりとして行く必要がある。
これからはもっと手軽に3Dデータを作れるツールが出てくる?さらには、
3Dデータを作成、編集するサービス業者なども多くなってくるかもしれない。
3次元データに関連するビジネスが、これからもっと広がる。
また、広げるためのビジネスモデルの構築が必要でもある。

2)クラウドソーシングでの拡大
以前のクラウドの記事でも述べた様に、海外ではoDesk、国内ではランサーズや
クラウドワークス等で活気づいているクラウドソーシングサービスだが、3D
プリンティングに特化したクラウドソーシングサービスが登場しつつある。
3Dプリンターで出力したいデータをサイトにアップロードすると複数の3Dプ
リント業者から出力するための費用見積もりが提示される。
例えば、国内で工業製品向けのハイスペックな3Dプリンターを保有している企業
が、自社製品のプロトタイプ作成だけではなく、外部からの受注を個別に受けて
3Dプリンターを稼働させるのも1つであり、ネットの拡大は、リソースの有効化、
平準化を進める。

①Quirkyの成功
Quirkyは42万7千人の登録会員からなるコミュニティによってアイディアを製品化
するクラウドソーシングサービスであり、「こんな便利なものがあったらいいのに」
などのアイディアも、今ではQuirkyが一緒に実現してくれる。
・Quirkyの仕組み
投稿されたアイディアをQuirkyがクラウドを使い、製品化の判断、デザイン、価格
設定を行い、最終的に製品が売れると、その10%-30%が発案者とクラウドの協力者
に支払われるという仕組み。Quirkyのオンラインショップでは、このプロセスに
より生み出された夢の膨らむアイディア製品が盛りだくさんにある。
・そのスピード
通常P&Gなどで1つの製品が生まれるには18-24ヶ月という長さが常識です。それに
対してQuirkyではアイディアが生まれてから製品が棚に並ぶまで120日という短期
間で製品化を成し遂げる。しかも、3Dプリンターでプロトタイプを作り即クラウドに
よるフィードバックをとり反映させることで、リスクをできる限り取り除く。
・トップレベルのデザイナー陣
ハイスピードなカルチャーでQuirkyは、トップレベルのデザイナーを囲い込むこと
に成功している。5-10もの製品のデザインを同時並行で進めるということ自体が、
幅広いポートフォリオのデザインを手がけたい優秀なデザイナーにとっては魅力的。

②Quirky事例より見るクラウドソーシングのトレンド
・クラウドを利用したプロジェクトマネジメント
現在あるクラウドソーシングサービスから一歩踏み込み、Quirkyは各ステージで
クラウドの力を利用しつつも、プロジェクトをゼロから完成まで主体的に動かす。
クラウドソーシングは「仕事の質が低い」「単純作業しか依頼できない」との話も
あるが、このようなプロジェクトマネジメント機能を加える事で確実に結果を出す
ことができる。
・レベニューシェアによるリスク低減
通常は売れるかどうか分からないアイディア製品も、売れた場合のみ売上げの中
から発案者とサポートした人たちに支払われるレベニューシェアの形式をとること
で開発段階の初期投資のリスクを低減している。発明的アイディアを扱うケース
のみならず最後まで成功が読めない事業では、こういったクラウドに対しての
報酬を売上げに連動させる形が成功の鍵となる。
・事前に消費者を巻き込みファン化する「プレシューマー」の存在
Quirkyは一緒にアイディアを実現するというインセンティブによりうまくクラウドを
巻き込むことで、消費者インサイトの反映された製品化と開発段階からのファン育成
(=未来の製品購入者)に成功している。この開発初期段階からサポートしてくれる
プレシューマーたちは開発に自分たちの思いが反映されることからいち早く口コミ
を起こしファン育成が出来る。

3)手軽に、モノづくりが出来る場所作り
日本では、ファブラボが大学、企業などを中心に、作られ始めているが、アメリカ
では、ハッカースペース(Hacker Space)、一言で言うとモノづくりをする人達が
集まる共同の作業工房、が各地に出来ている。アメリカやドイツのハッカー(モノ
づくりをする人)が中心となり、2005年頃からニューヨーク、サンフランシスコ
といった都市部で立ちあがり、現在までに全米700箇所に数を増やしている。
大きさは数十坪程度の小さところから数百坪程度の比較的大きなところまであり、
3Dプリンターやレーザーカッターを始め、溶接機、切断機、金属加工場、木工作業場、
といった所謂、三種の神器を含め、各種のモノづくり機器が用意されている。
その多くは会員性で、会員は月に100ドル程度の会費を払ってツールやマシンを
利用出来る。
ハッカースペースは、単にモノづくりのツールやマシンを提供するのみならず、
そこに集まる人々が交流するためのコミュニティにもなっていて、実際にハッカー
スペースを拠点にした共同プロジェクトやベンチャー企業が続々と誕生している。

以上のように、
次世代工作機械の柱となる3Dプリンターの特性を知り、経営に生かしていくことは、
今後の競争力強化のうえで極めて重要である。一方、中小企業からは、3Dプリンター
を活用したいがその方法が分からないとの声が多い。そこで、3Dプリンターの機能・
特性を踏まえた効果的な導入・活用法や公的支援策(補助金・税制/公設試験研究機関
による支援など)に関する相談に応ずるとともに、その場所作りや3Dプリンター
製造・販売元、3Dデータ作成研修機会、3Dデータ作成代行業や出力サービス業の
紹介などを行うワンストップサービスの実現等、面的な支援を充実させていく必要
がある。

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