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2014年11月14日

2014.11.14

あるフリーターの記事から、思う

少し前に放送された、NHKスペシャル「ワーキングプア」 
働いても働いても豊かになれない」を見ながら、私はなんとなく
違和感を覚えていた。番組では、働いてもそれに見合った給料が
得られず、生活もままならない人たちが、ワーキングプアとして
紹介されていた。最近でも、高齢者を対象にした同様の主旨の
番組もあった。
地方から東京に出てきて仕事を探すが、派遣でさまざまな会社
をたらい回しにされたうえに、ホームレスとなってしまった30代の若者。
会社をリストラされ、一家を養うためにバイトをいくつもかけ持ち
している元サラリーマン。イチゴの栽培が赤字で、家族全員の収入
を合算してなんとか生活する農家。そして、一時は人を雇うほどの
町一番の仕立屋だったが、今では小さな直しの仕事しかなくなって
しまった職人。年金は妻の入院費に消え、生活保護を受けようにも、
「妻の葬儀代に」と手をつけないでいる100万円の貯金の存在が、
生活保護を受給するにあたっての障害になっているという。

一生懸命まじめに働いても、生活が成り立たない社会が正しい状態では
ないことは明らかだ。普通の人が普通に働けば、普通に生活できる社会を
構築するべきだ。などと、ごく当たり前でなんの面白みもない想いが
わき上がってきてものだが、事態は、更に悪くなっているのが、実情である。
最近は、「格差の広がり」として、再びその議論が活発化しつつある。
最も、事態はワーキングプアの時よりも、ドンドン進んでいるだけで、
それを我々が知らないだけ、なのかもしれないが。

既に、格差については、以前の記事にも、その現状と原因らしきものについて
書いているので、そちらを再読してもらうとして、ここでは、
フリーターとしての自身の想いと不満を明確に書き綴った
朝日新聞社 「論座 2007年1月号」の赤木智弘氏の掲載文をジックリ
読んでもらいたい。
これは、赤木氏という特異な人の言葉ではない。既に、4割以上の人が
非正規の勤めをしている現状では、ある意味、普通の状態とも言える。
 
「ポストバブル世代に押しつけられる不利益
思えば私たちは、このような論理に打ちのめされ続けてきた。バブルがはじけた
直後の日本社会は、企業も労働者もその影響からどのように逃れるかばかり
を考えていた。会社は安直に人件費の削減を画策し、労働組合はベア要求を
やめてリストラの阻止を最優先とした。そうした両者の思惑は、新規労働者の
採用を極力少なくするという結論で一致した。企業は新卒採用を減らし、
新しい事業についても極力人員を正社員として採用しないように、派遣社員
やパート、アルバイトでまかなった。結局、社会はリストラにおびえる中高年
に同情を寄せる一方で、就職がかなわず、低賃金労働に押し込められた
フリーターのことなど見向きもしなかった。最初から就職していないの
だから、その状態のままであることは問題と考えられなかったのだ。

それから十数年たった今でも、事態はなんら変わっていない。経団連のまとめ
による「2006年春季労使交渉・労使協議に関するトップ・マネジメント
のアンケート調査結果」によると、フリーターを正規従業員として積極的に
採用しようと考える企業はわずかに1・6%にすぎない。世間はさんざん
「フリーターやニートは働こうとしない」などと言うが、この結果を見れば、
「企業の側がフリーターやニートを働かせようとしない」のが我々の苦境の
原因であると考えるほかはない。ちなみに、64・0%の企業が「経験・能力
次第で採用」としているが、そもそも不況という社会の一方的な都合によって、
就職という職業訓練の機会を奪われたのがフリーターなのだから、実質的
には「採用しない」と意味は同じだ。その一方で、職業訓練の機会と賃金
を十分に与えられた高齢者に対しては97・3%の企業がなんらかの継続雇用
制度を導入するとしており、その偏りは明白である。

企業の人件費に限りがある以上、高齢者の再雇用は、我々のような仕事に
ありつけない若者がまたもや就業機会から排除されることを意味する。
しかし、それを問題視する声はまったく聞かれない。これも同じく、経済
成長世代の就業状態をキープし、ポストバブル世代の無職状態をキープする
考え方だ。このような不平等が、また繰り返されようとしている。この繰り
返しを断ち切るために必要なことは、現状のみを見るのではなく、過去に
遡って、ポストバブル世代に押しつけられた不利益を是正することだろう。
近視眼的で情緒的なだけの弱者救済策は、経済成長世代とポストバブル
世代間の格差を押し広げるだけである。

「31歳の私にとって、自分がフリーターであるという現状は、耐えがたい
屈辱である。
ニュースを見ると「フリーターがGDPを押し下げている」などと直接的な
批判を向けられることがある。「子どもの安全・安心のために街頭にカメラ
を設置して不審者を監視する」とアナウンサーが読み上げるのを聞いて、
「ああ、不審者ってのは、平日の昼間に外をうろついている、俺みたいな
オッサンのことか」と打ちのめされることもある。
しかし、世間は平和だ。
北朝鮮の核の脅威程度のことはあっても、ほとんどの人は「明日、核戦争が
始まるかもしれない」などとは考えていないし、会社員のほとんどが「明日、
リストラされるかもしれない」とおびえているわけでもない。平和という
言葉の意味は「穏やかで変わりがないこと」、すなわち「今現在の生活が
まったく変わらずに続いていくこと」だそうで、多くの人が今日と明日で
何ひとつ変わらない生活を続けられれば、それは「平和な社会」という
ことになる。ならば、私から見た「平和な社会」というのはロクなもの
じゃない。夜遅くにバイト先に行って、それから8時間ロクな休憩もとらず
に働いて、明け方に家に帰ってきて、テレビをつけて酒を飲みながらネット
サーフィンして、昼頃に寝て、夕方頃目覚めて、テレビを見て、またバイト
先に行く。この繰り返し。月給は10万円強。北関東の実家で暮らしている
ので生活はなんとかなる。だが、本当は実家などで暮らしたくない。
両親とはソリが合わないし、車がないとまともに生活できないような土地柄
も嫌いだ。ここにいると、まるで軟禁されているような気分になってくる。
できるなら東京の安いアパートでも借りて一人暮らしをしたい。

しかし、今の経済状況ではかなわない。30代の男が、自分の生活する場所
すら自分で決められない。しかも、この情けない状況すらいつまで続くか
分からない。年老いた父親が働けなくなれば、生活の保障はないのだ。
「就職して働けばいいではないか」と、世間は言うが、その足がかりは
いったいどこにあるのか。大学を卒業したらそのまま正社員になることが
「真っ当な人の道」であるかのように言われる現代社会では、まともな
就職先は新卒のエントリーシートしか受け付けてくれない。
ハローワークの求人は派遣の工員や、使い捨ての営業職など、安定した
職業とはほど遠いものばかりだ。安倍政権は「再チャレンジ」などと言うが、
我々が欲しいのは安定した職であって、チャレンジなどというギャンブル
の機会ではない。そして何よりもキツイのは、そうした私たちの苦境を、
世間がまったく理解してくれないことだ。「仕事が大変だ」という愚痴
にはあっさりと首を縦に振る世間が、「マトモな仕事につけなくて大変だ」
という愚痴には「それは努力が足りないからだ」と嘲笑を浴びせる。
何をしていいか分からないのに、何かをしなければならないという
プレッシャーばかり与えられるが、もがいたからといって事態が好転する
可能性は低い。そんな状況で希望を持って生きられる人間などいない。
バブル崩壊以降に社会に出ざるを得なかった私たち世代(以下、ポスト
バブル世代)の多くは、これからも屈辱を味わいながら生きていくこと
になるだろう。一方、経済成長著しい時代に生きた世代(以下、経済成長
世代)の多くは、我々にバブルの後始末を押しつけ、これからもぬくぬく
と生きていくのだろう。なるほど、これが「平和な社会」か、と嫌みの
ひとつも言いたくなってくる。
、、、、、、、
私たちだって右肩上がりの時代ならば「今はフリーターでも、いつか
正社員になって妻や子どもを養う」という夢ぐらいは持てたのかもしれない。
だが、給料が増えず、平和なままの流動性なき今の日本では、我々は
いつまでたっても貧困から抜け出すことはできない。
我々が低賃金労働者として社会に放り出されてから、もう10年以上たった。
それなのに社会は我々に何も救いの手を差し出さないどころか、GDPを
押し下げるだの、やる気がないだのと、罵倒を続けている。平和が続けば
このような不平等が一生続くのだ。そうした閉塞状態を打破し、流動性を
生み出してくれるかもしれない何か――。
その可能性のひとつが、戦争である。、、、、、」
(赤木智弘)
朝日新聞社 「論座 2007年1月号」」

多分、赤木氏や多くの人が望む20数年前の元気な余裕のある社会が、日本に
再現することはない。各個人としての雇用状況は、さらに悪化するであろう。
グローバル化の進展、ITによる機械との競争激化など、旧来の世界とは、
大きく変わってきていることの認識が必要である。
でも、政府含め、昔頑張ってきた人々には、それを解決する方向と手法が
分からない。何しろ、「ガンバリズム」で、好くなると心のそこで信じて
いる人が多いのだから。
これからは、ITへのスキル強化など、自身の総合的な社会対応力を
上げる必要がある。しかし、多くの若者は、それを理解をしようとも
しない。

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