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2015年3月7日

2015.03.07

人工知能の光と影

人工知能。
何十年も前からある言葉だ。国家プロジェクトとして研究されていた時期も
あった。それでも完成しなかった。やはり人間の脳は複雑で、それをコンピューターで
真似することなど不可能かもしれないという時期もあった。
しかし、最近のコンピューター性能の向上とインターネットをベースとした様々な
情報の入手、所謂ビッグデータの本格化、そして、新しいコンピューターの学習手法
の開発などが相乗的に重なり本格的な人工知能への展開が進んでいる様である。
卑近な例から言えば、いまgoogleが進めている完全自動化の車である。人が全く
運転に関わらずとも、指示だけで安全にどこでもいけるとのこと。すでに全米各地で
の試験運転では、80万キロにも及ぶ距離を無事故で走行している。
この実績とそれによるデータの蓄積は極めて大きい意義がある。
自分自身で学習できるようになった人工知能は、今後ロボットに搭載され、ロボット
という身体を通じてさらに多くを学んでいくし、監視カメラや無人自動車、農業、
流通、広告、医療、会計、介護、通訳、教育など、今後の人工知能の発達に合
わせて、多くの業界が影響を受けていく。

1.人工知能の適用分野
多くの分野でその適用と活用が進むと思われる。
1)遺伝アルゴリズム
二つの親の特徴が子に混ざり合って遺伝する原理を利用した問題解決の手法。ここ
にある探索、機械学習やプランニングを実現する方法として利用されている。
この分野は、遺伝アルゴリズムの原理を用いてプログラムを生成する遺伝プロ
グラミングや生物集団の進化の過程、生体内の活動をシミュレーションする
人工生命などの分野に発展している。
2)エキスパートシステム
専門家の知見をルールとして蓄積し,推論の手法を用いて問題を解決するシステム。
3)音声認識
マイクに向かって話した内容をコンピュータに理解させる研究。カーナビゲーショ
ンなどのシステムで実用化されている。車内などの限定された状況以外での認識を
可能にしたり、誰が話しているのかを特定する研究などに発展している。
3)画像認識
カメラなどで撮った内容をコンピュータに理解させる研究。コンピュータ内にある
絵の内容を理解させる画像理解と絵の明るさや色調(例えばデジタルカメラの
セピア調など)を変えたりする画像処理とに大きく分けられる。
画像処理は実用化されているが画像理解はまだ研究段階。
4)感性処理
認知科学や人間工学の知見をもとに感じが暖かいとか冷たいといった感覚を
コンピュータ上に実現しようとする研究である。
5)機械学習
観測センサーやその他の手段で収集されたデータの中から一貫性のある規則を
見つけだそうとする研究。
6)ゲーム
人間とのゲームをコンピュータにさせようとする研究であり、人間のチェス
チャンピオンや将棋プロとの対戦でコンピュータが勝つまでになった。
6)自然言語処理
ふつうの文章に何が書かれているか、その意味内容をコンピュータに理解させる研究。
音声認識や情報検索の分野に応用されているが、今後は教育の分野でも活用される。
7)情報検索
蓄積されたデータの中から人間が必要とするものを見つけだすための技術であり、
検索エンジンなどで活用されている。
8)推論
いろいろなルールを統合して矛盾のない答えを導き出すための手法。最も基本に
なるのはアリストテレスの三段論法というものですが、これは「ソクラテスは人間
である。人間は死ぬ。よって、ソクラテスは死ぬ」という三段階で結論を出すもの。
9)探索
データの集まりから条件に合うものを見つけだす手法であり、データの数が多く
条件が複雑なので様々な工夫が必要になる。機械学習や推論の基盤となる技術。
10)知識表現
知識をコンピュータの中で的確に内容を表し、効率よく蓄積する方法についての研究。
11)データマイニング
データベース技術と機械学習が結びついた技術で大量の整理されていないデータから
役に立つと思われる情報を見つけだす手法。例えば、ネット上で買い物をすると
あなたの趣味にあったおすすめ品が示されることがあるが、これは今までの
買い物のデータをもとに顧客の好みをデータマイニンングによって調べているため。
12)ニューラルネット
生物の神経を元にした手法であり、機械学習の有力な手法として発展した。人工知能
の各分野で活用されている。
13)ヒューマンインターフェース
人間がより簡単にコンピュータなどの装置を操作できるようにするための研究。
14)ロボット
機械工学と人工知能研究の結びついた研究であり、ロボットをどう動かせばよいかは
人工知能の各分野の手法を応用して決められる。

2.人工知能の進化と変化
トロント大学が新しい手法を開発した。ニューラルネットワークの分野の中のDeep
Learningと呼ばれる手法である。ニューラルネットワークとは、脳のニューロン
(神経細胞)とシナプス(神経細胞結合)の回路をコンピューター上で再現したもの。
人間の脳と同様に正しい答えを出した回路が強化されるように設計されているので、
コンピューターが自分自身で物事を学習していくことのできる仕組みである。
そのニューラルネットワークを何層にも重ねるのが、Deep Learningと呼ばれる手法。
例えば、「猫」という概念を理解するために一番下の層のニューラルネットワークが
直線や曲線を認識する。次の層で目や耳という部位が認識される。次の層では目や耳
を含む顔が認識される。そして最後の層で身体全体が認識されて、「猫」という概念
を理解する仕組みだ。
ドワンゴの人工知能研究所の山川宏所長は「人間がモノを見た場合、視覚から情報が
入ってきてそれを脳内で階層的に処理していて、5層か6層のところで抽象的な表現が
出てくるって言われています。人間の脳の中の処理のここの部分が、これまではコンピ
ューターではまったくできなかった。それがDeep Learningでようやくできるようにな
った。長年、超えられない壁だったわけですから、すごくインパクトが大きい話です」
と語る。
スマホ+クラウド時代から、新しいパラダイムへの移行が始まる。IoT(モノの
インターネット)+人工知能」が次のパラダイムかもしれない。あらゆるアプリや
サービスは、バックエンドで人工知能につながるようになる。

3.人工知能の影
大分前にMITのメンバーがまとめた、機械と競争を読んだ。
・テクノロジーが雇用と経済に与える影響
・創造的破壊、加速するテクノロジー、消えて行く仕事
・ディジタルフロンティア
などのテーマで、コンピューター、ネットワークの進化拡大による
雇用の変化について、様々なデータを使い、説明している。
アメリカのデータであり、ちょっと違うかもしれないが我々としても、
キチンと考えておくべき時期かもしれない。
データとしても、
労働生産性の伸びがあるものの、世帯所得の中央値は、1970年代から
その伸びが鈍化しているデータもあり、また、最近10年間労働年齢世帯
収入では、2割以上減少している、とのこと。
更に、労働の対価だけではなく、求人数も減少している。
同じくここ10年間では、雇用創出がゼロである。
ただし、同時期の国民一人当たりのGDPは、堅調に増加している。
その富の増加分は、8割以上が、上位5パーセントの世帯に、
4割以上が、上位1パーセントに集中していることもはっきりしている。

コンピューター含め、テクノロジーの進化が、あまりにも速く、社会全体が
追いついていない現状は認識すべきことである。
これらに人工知能と言うテクノロジーの進化が加われば、更に格差が広まり、
結果的にテクノロジーが雇用を破壊していくことになる。
技術の進歩は、生産性を押し上げ、富の総量を増やしているとは言え、
その恩恵の分配には、負の影響を及ぼしていることをこれらの
データは、明確に示しているのだ。格差の拡大はその明確な結果であろう。
最近のピケッティの考えに興味が集まるのもその1つである。
日本でも、これほど顕著ではないかもしれないが、その傾向は現れている
様でもある。昔よく言われた国民総中流の時代は、既に昔の話であり、
技術の進化を喜ぶと同時に、その影の影響も充分考えておく必要がある。

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