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2015年5月29日

2015.05.29

ポジティブを組織活性化へ

個人のポジティブ感情を高めることは重要であるが、これを組織の活性化に
使えないかと言うテーマがポジティブ心理学にはある。
以前にも述べたが、セリグマン氏は、
「ポジティブ心理学は現状の改善を目指すが、社会自体の改革を目論むもの
ではなく、その実践は現行の制度と共存する形で導入される。
職場レベルで言えば、従業員個人および組織の生産性を上げると同時に、
仕事への満足度を高めることが主点となるが、生産的であることと満足感を味わう
ことが両立する関係となるような価値志向の創出が主題となる」である。

その大きな成果として
ロサダラインによる組織活性化の考え方がある。
ロサダ博士の研究チームは、60のマネジメントチームがそれぞれ年間の経営目標
や戦略を組み立てる様子を会議室のマジックミラー越しに観察し、各チームが
どのような言葉を用いて議論したかに注目して
1)ポジティブかネガティブか(励ましなど協力的で前向きな言葉が聞かれたか、
または皮肉や嫌味などの後ろ向きの言葉が聞かれたか)
2)自分向きか他人向きか(目の前の発言者やグループに言及したか、またはその場
に不在で自社にも関係のない人物やグループに言及したか)
3)探求か弁護か(状況改善に向けて質問を行ったか、または発言者自身に偏る議論に
終始したか)、
という三つのチェックポイントから分析した。
その結果、60のチームのうち25%に相当する15のチームをハイパフォーマンス
チームとして特定したのだが、彼らは確かに生産性、顧客満足度、上司や部下、同僚
からの社内評価という三つの主要な経営指標においても高得点をマークした。
さらにこれらのチームについてポジティブ感情(P)とネガティブ感情(N)の割合を
算出したところ、P:N=約6:1という、ポジティブ感情が際立つ形での比率が見られた
(ただし、ポジティブ度が高ければ高いほどよいということはなく、あまりに高い値
では逆に障害が出る)。
ちなみにいずれの経営指標でも低い得点を見せた、全体の30%に相当する18の
ローパフォーマンスチームでは、ポジティブ感情比が1を割ってP:N=約0.75:1
(ちなみに離婚に至る夫婦の場合はP=0.5)、そして経営指標の得点にばらつきが
見られた残りの混合型チームにおいてはP:N=約2:1という比率が算出された。

ロサダ博士がこのときの3タイプのパフォーマンスチームについて数学モデルを
用いてグラフ化している。P/N比を検討していくと、数学の世界では真実が美と
して表現されることを想起させられるかのような美しい蝶のような形が浮かび出る。
結果的に、平均レベルで人間がうまく機能するためにはP:N=約3(2.9013):1の
割合を保つことが重要であることがこの研究から判明した。
社員がうまく機能するP/N比の実現を目指して、ポジティブ度を上は約3または
それ以上)から下は約1という「ロサダ・ゾーン」を目安にしての企業向け
トレーニングが行われ、成果を挙げている。
例えば、70人の社員が居れば、ポジティブ感情の強い人を60人ほどにすれば、
組織としては上手く成果を上げていくが、50人ほどでは、停滞する可能性が
高い事になる。

人々の人生が上昇スパイラル(気分は高揚し、生き生きしている。行動は自由
で独創的で、どんどん成長していく)に乗り繁栄に向かうか、下降スパイラルに
乗って沈滞に向かうかの形勢をどちらに傾けるかの転換点がこの数字です。
何人かの学者が微妙で捉えどころのないポジティビティだが、その日常での頻度
が3:1を超えると繁栄に向かうことを実証的データに基づき確認したと
言われている。

ポジティビティとネガティビティは対称的ではなく、ネガティブ感情は
ポジティブ感情よりも強く感じられるため、ネガティビティを日常で頻繁に
感じていると誤解しがちだが(心理学ではこれを「ネガティビティ・バイアス」
と呼ぶ)、実際には多くの人たちの日常の大半は、「ほどほどにいい状態」
にあると言う。それでも、大多数の人たちの比率は約2:1、うつ的な状態にある人
(1割程度)は1:1かそれ以下であり、繁栄に向かう3:1以上の人は5人に
1人以下という結果が報告されている。
「ポジティビティ比に転換点がある」というのは、画期的な視点となる。
ポジティビティの効果が微弱であることは、分かっていたが、学者の中には、
「たとえ、かすかでも何らかの効果はあるはずなのに、それがさっぱり現われない
ときがある」と言われてもいた。
転換点という考え方は、これらの現象に解を与えた。
3:1以下のとき、ポジティビティは、ネガティビティの強大な力に圧倒されて
何もできない。3:1を超えたときにようやく、非力なポジティビティは数の力で
何とかネガティビティに打ち勝つことができる。ポジティビティが蓄積され、
組み合わさって、転換点に到達すると、そこまできてようやく、驚くべき効果が
生活のなかで実感できるようになる。また、上手くいっている夫婦のポジティブ比は
凡そ5:1であり、うつ病患者のポジティブ比は凡そ1:1とのデータもある。
それぞれが独自に研究されてきたものだが、結果には一貫性があった。
面白い人間行動であり、人間とは奥深い。
ただし、ここで注意すべきは、比が「3:0」ではないところであり、ネガティビティ
もまた大事となる。ネガティビティなしの「繁栄」などはない。どれほどポジティブな
人でも、大切な人や物を喪失すれば、涙を流すのは当然でであり、不当な行為に対して
怒り、危険を恐れるのお自然なこと。汚い物や残虐行為を目にすれば、不快になる。
3:1という比のよいところは、さまざまな人間の感情を包括する幅を持っている
こと。何でも多ければ多いほどいい、というものではないと心理学者は言います。
ポジティビティも多過ぎれば、それなりに問題が起こるでしょう。
第一、望むと望まないとにかかわらず、ネガティビティは私たちの生活に入り
込んでくる。実際、「繁栄」する人生を作るために「適切なネガティビティ」
はなくてはならない要素となる。
ポジティビティとネガティビティが適度な割合で組み合わさった場合は、
これら相反する力が、人を力強く現実的にし、腹の据わった状態にする。
適切なネガティビティが、必要に応じて引き戻してくれるため、現実を
見失わずに済み、心から感じるポジティビティが浮力を与え、「繁栄」に
向かって押し出してくれる。

具体的に組織をロサダラインレベルにするには、ネガティブ指向とポジティブ指向
の人の配置が重要ではあるが、以下の点を配慮する必要もある。
1)ポジティブ感情がおき易い環境作り
これは、以前の記事にも書いたので省くが、たとえば、googleなどの企業や
ベンチャー企業の職場環境(遊び感覚のスペースなど)を楽しいものに整えたり
しているのも、社員が束の間ではあるが、幸福感を味わうたびに、ポジティブ感情
が生じ、創造性と革新性が高まるからであろう。
このポジティブ感情アップのお陰で、有効な解決へのヒントも出てくる。

2)関係性を高める
周りの人々とどのような関係を築けているかという、関係性。
人間が生きていく上で、他者との関係性がその人の人生に与える影響は絶大であり、
その関係をどれだけ楽しく、お互いに支え合えるような関係を築けているか。

3)意味付けをキチンとする
自分の人生に意味を見出せているかは、よく生きる上で重要となる。
周りから見るとどんなに大変に思えるようなことであっても、自分が考える大切なもの
に貢献できていれば、その人にとっては幸せな人生となる。
人が生きていく上で意味を見出すということが大事となる。

4)達成目標を与える。
生きていく上で大きな目標、小さな目標たくさんある。
目標を達成することで、私たちの人生は満たされて行く。
目標を持って生き、その目標を達成することで、人生を豊かにすることが出来る。

単純に頑張ろう精神ではなく、個人、組織活性への要因、要素を明確にすることで、
より効果的なアプローチも可能となるのではないだろうか。
こんな事例もある。
ザンダー氏は、自らが講師を務める音楽院で、毎年、新年度のはじめ
に、60人の音楽家の卵たちに「A」という文字を書かせる。「A」という文字
とともに成績が授与される学年の最後の日の日付も書かせる。そして
学生自身に説明させ、「A」をもらった自分に「惚れさせる」。「取れないので
はないか」とささやきかける自分の声を完全に念頭から追いやるようにと指導する。
結果的に、学生たちは外からの期待に添うように頑張るのではなく、「A」という新
たな「未来の現実」の中に自らを見出して頑張るようになるという。
また、ショーン・エイカーは、「幸福優位の7つの法則」で個人、組織が上手く
活動できる7つのポイントを述べている。
ここでは、以下の3つについて確認したい。
・心の持ち方を変えていく。
自分の能力を信じることができる人は成功する。仕事に対するポジティブな
心の持ち方は、パフォーマンスに影響するだけでなく、能力を向上させる。
人の生き方に仕事の意味や自他の期待が影響する。
例えば、社員に自身の「職務記述書」の書き換えをしてもらい、自身の人生
の目標について考えてもらう。
・ピグマリオン効果の適用
誰かの可能性を信じれば、その可能性を高める。組織とそのメンバーの能力を
アップする。
ただし、リーダは以下の心がけが必要となる。
①部下の知性とスキルは、固定したものではなく、努力によって、改善できる
と信じていること。
②部下が仕事に意味と満足を見出したいと思っていることを信じている。
③自身の日々の行動や言葉によって部下にその信頼を伝えている。

・ソーシャルへの投資(仲間の大事さ)を奨める。
仕事ができるようになるには、自分ひとりで集中ればよいと思いがちだが、
それは間違っている。仲間を持っている人の方が、いい仕事ができる。
ストレスや困難な状況を打破するには仲間が必要だ。
人間関係はレジリエンスの最重要要素のひとつだ。学習の時間、仕事の時間を
ふやせすことだけではよい仕事はできない。仲間が大事。仲間が生き残りと
繁栄を約束する。
組織の活性化している企業では、人間関係への投資をキチンとしている。
例えば、社内寄付制度や社員支援基金など、具体的な施策を実施している。
また、社員同士の絆が自然に生じるような時間と場所の提供をしている。

最近、人の能力とは凄いものとあらためて考えさせられている。しかし、組織を
預かるものは、往々にして自身の狭い智慧と器量の中で、組織を動かしている。
出来れば、ポジティブ心理学の考え方を取り入れ、自身の考えもあらためて
新しい活気ある組織を創ってもらいたい。

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