« 2015年9月25日 | トップページ | 2015年10月9日 »

2015年10月2日

2015.10.02

「2040年の新世界」より思う。3Dプリンタが拓く世界その三

この本でのポイントから色々な変化が感じられる。
・蒸気機関や電信に匹敵する革新的技術
・ほとんどなんでも作れるマシン(前回の10の特質を持つ)である
・ビジネスと雇用はこの機械によってどう変わるか?
大量生産の変化、雇用の変化
・3Dプリントの技術が高める経験経済の拡大
・生体インクでバイオプリンティングを行う
・食のデジタルフードプリンティングの実現性
・グリーンでクリーンなものづくりの出現
・学校教育での3Dプリンタの果たす役割
・武器製造、違法ドラッグの製造が可能となる

バイオプリンティングもその大きな期待が高まっている。
バイオプリンティング は、特殊な形式のコンピュータ制御による3D印刷。この印刷
では、事前に定めたパターンでプラスチックまたは金属の層を積み上げてから各層を
融合させてるが、バイオプリンティングでは、ビーズ状の生きた細胞の
「バイオ・インク」の層と、結合ジェルの層を交互に重ねる。細胞は、それが万能
の幹細胞であるか、特定目的のために選ばれた成体幹細胞であるかを問わず、
人体内で果たすのと同じ機能を実行するよう自身を組織化していく。
3Dバイオプリンティング は、富山大学の中村教授がインクジェットプリンターに
よって紙に置かれる小さなインクの液滴のサイズが、生体細胞のサイズとほぼ同じで
あることに気付き、最初の3Dバイオ・プリンターを2006年に製作した。
「われわれは、種類が異なる細胞を使用して3D構造を製作できることを実証
しました。血管の構造を模して、内側は血管内皮細胞、外側は平滑筋細胞という異なる
種類の細胞で2層の管を作ることに成功したのです」と中村教授は語る。

他にも、世界でこの分野での様々な動きが活発化している。
サンディエゴ市のある研究室では、肝臓組織の小片がヒトの完全な肝臓とまったく同様
に、40日を超える期間にわたってタンパク質、酵素、コレステロールを作り出し続けて
いる。しかし、大きさ3mm2、厚さ0.5mmにすぎないこの組織は、ヒトの肝臓からのもの
ではない。特殊な3Dプリンターで「製造された」もので、生体組織工学の大きな
進化でもある。
さらに、イギリス、フランス、ドイツ、日本の研究者たちが様々な特殊なコンピュータ
テクノロジーを導入し、皮膚、膀胱、骨、歯などを含むヒトの器官の製造を完全なもの
に近づけようとしている。
これが上手く行けば、完全な器官として機能する肝臓、腎臓、心臓などを作成する
ことで、この研究が成功すれば、毎年数千人の命が救われることになる。

また、米国ニューヨーク市にあるコロンビア大学の科学者たちは、
バイオプリンティングによる歯と関節の作成に取り組んでいる。これらには栄養が
不要なため、組織の維持がより容易なはずで、コロンビア大学のチームは、ラットの
あごの骨に3Dプリンティングによる土台でできた歯を埋め込み、2ヵ月以内に
インプラントによって歯根膜の成長と新しい骨の形成が促された。
さらに、ウサギに対するバイオ・プリンティングによる寛骨の移植も実施され、
そのウサギは数週間以内に新しい関節を使って歩き始めた、という。
多くの関係者は「満たされていないニーズにより実り多い領域が多数あります。それは
特に、医薬品分野で顕著です。厚みがあり複雑な組織の実現にはもっと時間がかかり
ますが、組織を3Dで見たときの最小の厚さがミリ単位であれば、早期に実現可能
となるでしょう。我々はそうした組織を5年以内に人に対する臨床試験に投入すること
を目標としています。」という。

先ほどの中村教授は、機械工学的に生きた細胞と生体を構成する材料を適切に配置
して立体細胞組織構造体を作り上げるアプローチを始めた。この手法を中村教授らは
「バイオファブリケーション(biofabrication)」と呼んでいる。
中村教授はまず、「細胞を一つ一つ積み重ねていくためには、細胞を一つ一つつまむ
技術が必要」と考え、細胞操作用のマイクロマニュピレーター(光学顕微鏡で見ながら
細かな作業を行う装置)の開発に取り組んだ。
しかし、1立方センチの組織を作るには、1億~10億の細胞が必要であり、「とんで
もなく高速に細胞を並べる」必要があった。
しかし、インクジェットの高度な技術は、「インクドットの大きさは細胞一個に匹敵
するサイズで、しかも莫大な数のドットが全て厳密に、位置、色、密度、配合を
コンピュータで制御されて打たれている」までになっていた。
その後の試行錯誤の中で、プリンターメーカーの協力を得て、細胞の大きさに合った
研究用のインクジェットのヘッドを使って細胞を打ち出してみると、細胞は生きたまま
打ち出せ、増殖にも影響がないことが確認できたという。
しかし、乾燥すると細胞は死んでしまうことから、細胞を乾燥から守るためにインク
材料としてアルギン酸ナトリウム溶液を用い、受け側には塩化カルシウム溶液を
用いて、打ち出した細胞をゲルで固める工夫を加えた。これにより、打ち出された
細胞は、生きたままゲルに包み込まれ、ビーズのようになる。さらに、ラインを
引くと滲むまずにゲルの繊維となり、立体交差もできることが確認できた、という。

今後の課題としては、装置の改良とともに、細胞を受け止めるゲル材料の改良および
新材料の開発が挙げられる。現在使っているアルギン酸ゲルは、造形のしやすさでは優
れているが、ゲルの中で細胞が育ちにくいという問題がある。血液が固まる性質を利用
したフィブリンゲルでも作ってみたが、細胞の育ちやすさの点ではアルギン酸ゲルより
優れている一方、強度が非常に弱く形を維持することが難しかった。造形と細胞の成長
・組織形成を両立することが課題という。

有名大学や企業の研究室、生体工学者など、現在約12の機関が「コンピュータ適応型
生産(computerized adaptive manufacturing)」と呼ばれる人体組織複製の研究に
取り組んでいる。
コーネル大学では、心臓弁や膝の軟骨、インプラント用の骨、ウェイク・フォレスト大
学では腎臓の細胞をプリントしているほか、やけどや傷の治療で患部に皮膚組織を直接
付着させられる携帯機器の開発に取り組むチームもある。
さらに、私たちの動脈や静脈などの血管は、内側の層に血管内皮細胞を持った多重
チューブ構造をしているが、そこでインクジェットの2色インクを使って、生きた細胞
を配置した二重構造のゲルチューブを作製することに成功した。
また、カリフォルニア州サンディエゴにある会社Organovoの研究者たちは、
3Dプリンタを使って史上初めて人間の肝臓の小さなレプリカ製造に成功した。

BtoI、個人(Individual)への対応が更なる可能性を高める。
医療やファッションや食品など、日本での製造関係とは違った異業種が
注目されている。
医療関係はまだ発展途上であるが、今までの記述のようにその可能性は高まっている。
まず、BtoIへの流れを感じたきっかけというのはファッション業界との取り組み
が大きい。自分たちで流行を作って、在庫見込を計算して9号や10号など規定
サイズで生産するわけだが、必ず見こみ違いの在庫不良が出るので、それをセール
で売りつくすことになるというのが昔からの課題。この当たり前とされてきた
サイクルを、当たり前ではないのではないかと気付きはじめている人たちがいて、
それを解決するのはやっぱりBtoIという考え方ではないかと考えている。
つまり、規定のサイズを作り置きするのではなく、需要に応じて作れるシステムと
プロセスというのを完成すればいいじゃないかと考えている。型紙の代わりに人体
データがあれば、1本の糸から紡いでワンピースとかカットソーを作るぐらいの
技術力を持った企業もある中で、決して遠い話ではない。医療もやや時間がかかる
かもしれないが、これからは、消費者という一括りにした対象ではなく、
BtoI、個人(Individual)としてより細分化したニーズや個性に応えてゆく必要
があるし、それができる形に移っていくと考えられている。
それがフードプリンティングであり、バイオプリンティングの世界である。

« 2015年9月25日 | トップページ | 2015年10月9日 »

最近のトラックバック

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ