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2015年10月9日

2015.10.09

「2040年の新世界」より思う。3Dプリンタが拓く世界その四(教育と3Dプリンタ)

3D技術の進化は多いに期待できるが、この本でも、その教育現場での3Dプリンタ
の活用に注目している。日本政府も「世界最高水準のIT社会の実現」に向け、
IT教育推進ツールのひとつとして3Dプリンタの導入支援について言及するなど、
教育ICTのツールとして認識されてきた。最近は、比較的コンパクトで求めやすい
価格のプリンタも登場したことから、具体的で効果的な教育現場での利用方法が
更に強く求められている。

3Dプリンタは、米国のオバマ大統領も注目しており、STEM教育(科学・工学・
エンジニア・数学)のさらなる向上ために約1,000校に導入するという。
日本国内でも、児童生徒のデザインやプログラミング能力の向上だけでなく、子ども
たちを積極的に授業に参加させるツールだと注目されている。
従来は、紙や画像でしか見ることのできなかったものを具現化することで、子どもに
とってより理解しやすくなり、学習意欲の維持と向上につながることがメリットの
ひとつであり、平面図、立面図、断面図など2次元ではイメージが難しい図形でも、
3Dプリンタで印刷することによって、手にとって実際に触ることができる
ようになる。
さらには、3Dプリンタを利用するに当たり必須となる3DデータをWebサイトで無料
提供しているところもあるという。しかし、独自で考えたデザインを印刷するためには
3DCADや3DCGといった専門的なソフトウェアを用いたデータ作成が必要と
なるため、自在な活用には課題が残るが、3Dプリンタは大学での建築物のモデルや
立体地図の印刷、製品デザインのサンプルの印刷など、幅広い研究分野ですでに活用
されており、今後手軽さが増すにつれてさらに多くの大学・研究分野への普及が
期待される。また、小中学校や高等学校、一般家庭に普及することで図画工作や美術
の授業での活用や子どもがブロックを組み立てるように思い描いたものを3Dで印刷
するなど、ものづくりへの好奇心をかきたてる高度な知育玩具としての効果も期待
されている。

この本では、アメリカの実情を中心に書いてあることもあり、先ほどのSTEM教育
についてもその将来性に言及している。しかし、国内では、平成25年6月14 日
に閣議決定された世界最先端 IT国家創造宣言で、「新しいモノづくりである
デジタル・ファブリック(3Dプリンタ等)やロボッティックス、プログラミング、
情報セキュリティ、コンテンツ作成等、学生等が将来を展望した技術を習得できる
環境整備を教育環境の IT 化とともに進める。」と明記している。
また経済産業省は 3Dプリンタを学生が使えるように導入する教育機関に対して、
購入費の 3 分の 2 を補助する事を発表した。夏ごろにまずは大学や高専から数校
選定し、実施し、来年には全国の中学高校まで対象を広げる、という。
これらより教育現場における 3Dプリンタの導入が進むと予測される。
しかし、3Dプリンタは出力装置であり、3Dデータが存在して初めて意味の
ある機器となる。
メディアでは、3Dプリンタが注目されているが,有効活用のために必要不可欠な
3Dデータについての整備が追い付いていないのが現状である。特に教育現場で
使用する事を想定した3Dデータはほとんど存在しない。3Dデータ自体は
コンピュータ上で視点移動・回転が自由に出来るため、必ずしも3Dプリンタで
出力する必要が無い。
また、3Dプリンタは全ての形状のものを出力できる訳ではなく、不向きな形状
もあるため、万能ではない。
重要なことは3Dデータの活用であり、3Dプリンタの導入ではない。

1)3Dデータの利用とその指導
現在の教育現場で用いられている紙媒体の教科書では、3Dの表記が難しく別途
教材として、模型等を利用している。しかし、定型,既成の物は用意できるが、
教師の意図通りの模型を全て用意する事は困難である。算数の立体、理科の
分子モデル、社会の地形等、様々な教科で3Dが有効な場面があるが、2Dの
情報から3Dへの頭の中での展開は、全ての生徒が得意とするものではない。
そのため、理解度を上げていくためにも3Dでの指導が望ましい。
2)数学での利用
小学校の算数で立体を学ぶが、この時点で空間認識能力による理解の差がついている
可能性がある。現状では模型を使うことが多いが、一つか二つ程度の模型を生徒全体で
共有する事が多く、生徒全員がじっくり模型に触れながら理解する環境にない。
例えば、正二十面体をコンピュータで表示した場合には、全ての方向に回転して確認
する事が出来るため、紙媒体では得られなかった全方向からの理解をすることが
出来る。
3)理科での利用
理科では、微小なものに対しての拡大物として利用する事で理解を深めることができる
と期待できる。微小なものは顕微鏡等での拡大写真で学習しても一方向からの
視点でしか見られないため、3Dデータで任意の倍率や視点から構造を確認する事で
理解度が上がると考えられる。
DNAのらせん構造や細胞の構成等、その利用範囲は広い。
4)社会での利用
社会では地形の学習での利用が考えられる。盆地、平地、河岸段丘のように実際の
地形の高低差を示すことにより理解度が上がると考えられる。
地形の場合では、実際に現地に行ったとしても平野、盆地等、視界の範囲内で全てを
見渡せない事も多く、理解できない事が多い。しかし、3Dデータでは拡大縮小
だけではなく高低差の倍率も変更できるため、地形を立体として認識しやすくなる。

3Dプリンタ教育の事例
1)Fab Schoolについて
「ファブ・アカデミー」は、各種工作機械の使い方を覚えながら、自由にものづくりが
できるようになるための講座で、世界各地のファブラボをビデオ会議システムで結ぶ遠
隔講義カリキュラムとして提供されている。月2回のペースで授業と作品講評が
行われ、半年のカリキュラムを修了した人には認定証が渡される。
このカリキュラムは、MITにおける人気講座「(ほぼ)あらゆるものをつくる方法 (How
To Make Almost Anything)」が原型となり、それが拡張されて多地点同時中継方式
となったもの。この講座を修了した人は、自分で「ファブラボ」を切り盛りするための
十分な技量を持っていることが保障されたという意味も持つ。
また、日本では2011年10月より東京藝術大学・芸術情報センターの公開講座
として「Fab School Tokyo 2011」が開講された。幅広いバックグラウンドを持つ
市民が参加して各種ツールに触れながら、自由なものづくりを体験した。
例えば、製造プログラムの目標の基礎は、金属加工や溶接の分野での雇用のために
必要な職業訓練を学生に提供する。学習への実践的なアプローチを採用しながら、
カリキュラムが加速され、学生は、わずか7ヶ月でプログラムを完了すること
ができる。

2)創造空間ナノラボについて
創造空間ナノラボは2011年から株式会社インフォコアの秋葉原事業所を一般の
人たちに開放した工房。代表の杉山さんは、ナノラボをつくった理由をあっさり
「CSR(corporate social responsibility)社会貢献のようなものです」と言われる。
会社組織なので、ある程度収益は考えられているそうですが、「あまり儲かる事業
じゃない」と言わる。儲からなくてもナノラボを運営されるのは、いくつかある
理由の中で、この本でも指摘する言葉がある。

その一 夢に向かう忍耐力がつくから
「ものつくるには、忍耐がいります。何をつくるにも、夢や目標が必要です。夢や目標
に向かって、ばらばらで、あちこちに散らばっているものを、かきあつめ、色々工夫し
ながら、つくりあげていきます。つくるには忍耐力が必要です」と杉山さん。
誰かがつくってくれたものを、消費するだけの人生を歩みますか? それとも、夢に向
かって何かをつくりますか? と聞かれた気持ちがしました。つくり、創造し、夢に向
かった生き方の方が、素敵ではありませんか?

その二 怒りを「創造」に昇華できるから
「僕の場合は怒りからものづくりが始まっていますね」
「これが、したいけど、できない。なんでなの? あ~何々~がないからだ!!
誰かつくってくれないかな? でも自分と同じものがほしいと思っている人は他に誰も
いない。それなら自分がやらないとどうにもならない。
最後に自分で作ってしまえば、実はそれが必要だった人たちが集まってきて笑顔になる
んです。最初は自分の怒りだったものが、みんなの笑顔に変わるんです。」

その三 単に楽しいから
「ナノラボは楽しく遊びながら技術が身に付くといいね。というコンセプトでやってい
ます」とのこと。
ものづくりは楽しいのです。ナノラボは、楽しい場所なのです。大企業へ、外国へ行っ
てしまったものづくり。3Dプリンターを使ったり、電子工作で初めてみたら、毎日が
もっと楽しくなるに違いありません。

「ナノラボは、気軽にものづくりが、世代関係なくできる場所にしようと始めました。
プロフェッショナルな人のためのものづくりを支援する場所は、産業技術研究センター
があります。でも、一般の人が身軽にものづくりを始める場所が必要だと思った。
環境がなければ始められません。だからナノラボをつくったのです」と杉山さん。
「それから、ものづくりは、子どもの情操教育にとてもよい影響をあたえます。ゲーム
は、破壊したり、殺したりが多いですが、子どもに必要なのは『つくる』ほうです。そ
こで、昨年の秋からさらにもう一つ付属施設として開設したのが、ナノラボトレーニン
グセンター(略称NLTC、http://nano-pro.jp/school/)です。」
AMラジオのパーツを、秋葉原で買って組み立てるラジオ少年だった杉山さん。子どもの
頃のものづくりの原体験が、振り返れば重要だったそうです。
ナノラボではトレーニングセンターが併設されていて、日本の次世代を担う小学生4年
生から中学生向けの、電子工学のコアテクノロジーが学べるジュニアスクール「ロボッ
エンジニアコース」と「ITエンジニアコース」があります。
大人向けでは、エキスパート養成講座に、「3Dプリンターコース」「レーザー加工機
講習」「ソフトウェア講習」があり、大人でも、やる気があれば、日本のものづくりを
支える、メーカーを目指す環境があるのです。

これからは、幅広い人たちの関わりが3Dプリンタをより社会の中で進化させ、この本
でも言っている「社会革命」となる。このためには、教育が重要であるが、国の意識は
モノづくりへの意識が強いように思える。

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