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2015年11月20日

2015.11.20

「2040年の新世界」より思う。3Dプリンタが拓く、光と影。

今までの記事では、技術の進化に伴い、我々が技術の恩恵を如何に受けるか、
であった。
本書では、こんなことも言っている。 
・3Dプリンタは、いつか究極のFAX機になる
・人口のミニ臓器は、経験の浅い外科医の訓練に役立つ
・市販されている主なプリンタのひとつであるメイカーボット社のレプリケーターは、
「フロストルーダー(Frostruder)」という追加部品を取り付けてフードプリンタにす
ることができる 等。これらは前回までに色々と書いてきた。
しかし、高度な形をスキャンすることの大変さ、知的財産権の問題、ドラッグや武器
の複製問題など、3Dプリンティングの課題、問題についても書いている。
技術の進化には、光と闇の部分が必ず並存する。

本書は大きく3つの内容に分類できる。一つは1章から6章までは3Dプリンタの経済
への影響や、機械的な仕組み、デザインソフトといった「3Dプリンティングの仕組み
とこれから」について述べられている。二つ目は7章から10章まででフードプリンタ
や医療、教育、アートに関して「3Dプリンタによって可能となること」について
述べられている。過去の記事では、これらを書いてきた。
三つ目は11章から14章までで、環境問題、知的財産権そして技術の発展で可能に
なることなど、「将来3Dプリンティングがもたらす期待と不安」について
述べられている。
今回はその複製問題や知的財産などの不安な点について述べていく。
環境問題、特許などの知的財産権、薬物や武器の複製問題(12章)などの3D
プリンティングの課題について考えることが重要である。

1)複製問題の事例より
昨今話題となったのが、拳銃の自作である。
アメリカを中心にそのような報告が多いが、日本でも最近3Dプリンタを用いて
拳銃を製作していたとして、湘南工科大学職員が神奈川県警に逮捕された。彼は、
ガンマニアであり、インターネットを通じて海外サイトから設計図をダウンロード
したとみられる。
「銃器の自作」以外にも様々なものが指摘されている。

・高度なスキミング装置の量産化
3DプリンタとCADシステムを用いることにより、カード情報を盗み出す高度な
スキミング装置が、簡単に量産できるようになる可能性があるという。
オーストラリアでは、3Dプリンタで作られたスキミング装置がATMに仕掛けられると
いう事件も発生し、逮捕者が出ている。

・高度な防犯鍵の複製
米国シュレイジ社が開発した、高い防犯性能を誇る鍵「プリマス」。
高度な技術によって生産され、政府期間や拘置所でも利用されており、「複製する
ことは不可能」とメーカーは自信を持っていたが、マサチューセッツ工科大学(MIT)
の学生たちが、3Dプリンタを用いてその鍵の複製に成功した。
MITの学生たちは、独自に開発したソフトウェアと、高出力3Dプリンターサービスを
利用して複製に成功したと報じられている。しかもナイロン素材であれば、
かかった費用はわずか500円程度だったという。

・武器の複製
CNNニュースによると、米国防総省は正規に製造された軍事機器の部品が偽造される
危険が増していると懸念している。3Dプリンターは墜落した小型無人飛行機、
ヘリコプター、飛行機などの部品断片も容易に複製可能だ。このため、米国の軍事技術
を他国が複製する危惧がある。米テキサス州オースティンを拠点にする
「ディフェンス・ディストリビュート」はインターネットを媒体にした武器の開発と
情報提供を目指す団体だが、同団体により製造されたプラスチック製銃が
最近、公表された。
3Dプリンタで製作した銃を実際に発射して見せる動画が公開された。
前例を超える技術規制を米議会が行動を起こすのは待っていられないと、一部議員の
中には3Dプリンタによる銃器に対して法律規制を求める活動を始めている者もいる。

・薬やドラッグの製造
スコットランドのグラスゴー大学の化学者であるクローニン氏は、明るい色彩の
プラスチック製玩具やハニカム構造のブレスレット以外にも3Dプリンタの
可能性を予見している。彼は同僚と共に英国の化学雑誌「ネイチャー・ケミストリー」
で「ケムピュータ」(Chemputer)に関する論文を発表した。
「ケムピュータ」(Chemputer)とは、自在に化学素材を組み合わせて成型してくれる
3Dプリンタのことだ。新薬を迅速にプリントできる可能性があるという。
個人のDNA配列に合わせて、新薬が3Dプリンタにより製造可能になる
かもしれない。
しかしオンデマンド方式での薬の生成技術は、娯楽用ドラッグがプリントアウト
される可能性もある。コカイン生成の化学式は公開されている。また、塩素ガス生成
の化学式も公開されている。小さな組織でも今後、洗練された生物または化学兵器を
作成する可能性は高い」と語っている。また、彼は、3Dプリンタ銃に厳しい規制を
呼びかけている。

・3Dプリンタ規制への動き
一部では、3Dプリンタの登録について米国商務省と防衛部門で現在議論が行われて
いると述べた。だがオンライン上で既に事態は発生しているとして、デジタルの精霊
をビンの中に閉じ込めておくことは事実上不可能だと指摘した。
米国は必要な規制を実施することができるだろうが、業界はグローバルな展開を
見せている。 「3Dプリンタを規制するために、全体像を概念化することは非常に
困難である。数十年にもわたり射出形成や印刷用染料を使用してきたが、製造プロセス
にかかわる人すべてを規制することは不可能だ」と法律事務所の知的財産弁護士らは、
述べているという。「どれほど3Dプリンタは危険なのか? 本当に新しい法律制定
は必要なのか? 生物テロに使用された炭疽菌、爆弾、中枢神経系興奮薬メタン
フェタミン(などが一括して容易にプリントされる日が来るかもしれない。」と
言われている。」また、「3Dプリンタには未解決な法的問題がいくつもある。
中でも大きな問題は、誰かが3Dプリンタ銃で第三者を撃った場合、あるいは化学
兵器をコピーした場合、元々の製造者は責任を負うのかというものだ。製造方法の
「性質」が問題に大きく関与してくる。 確かなことは、もう後戻りできないという
ことだ。3Dプリントしたパーツから作った銃で、実際に武装可能だからだ」。

2)著作権、知的所有権の問題
3Dプリント市場は今後10年間で成長の一途をたどる。昨年以降、各調査会社や
金融機関が市場の見通しを発表しているが、3Dプリンタは世界規模でますます
拡大していく。その一方で3Dプリンタの普及が進めば進むほど課題となるのが
著作権、知的所有権の問題だ。
3Dデータから直接物体生成できるという特性上、極端な言い方をすれば、一つの
データで何度でも同じ物体を製造することが可能だ。
不正にコピーされた商品のデータを使って大量に生産し、販売するということも
当然起こりうるとされている。そのような懸念があるなか、大手IT系調査会社の
ガートナーは3Dプリンタが拡大することの被害総額を予測している。
著作権侵害によるその被害総額はグローバル規模で見た場合、2018年度には
1000億ドル、約10兆円に達すると予測している。

3Dプリンタとそれに伴う関連市場は確実に成長を遂げていくが、一方で、こうした
著作権侵害の課題を解決することなくして、更なる成長は生まれないだろう。
今新たに3Dデータによる著作権侵害の課題を解決する動きが着実に浸透しつつある。
その代表的な取り組みが3Dプリントする際の3Dデータのストリーミング化だ。
こうした3Dデータの安全な取扱と、制作者の知的財産権が保護される仕組みが
整ってこそ、本当の3Dプリンタの浸透が始まると言っても過言ではない。
特にこれからは、大手小売りチェーンやメーカー各社が3Dプリント市場に参入
するには、データのストリーミング化と知的財産の保護は必須となる。

しかし、多くの方にとって重要なのは、この3Dプリンタの普及によって、
実ビジネスがどう変わるかということであろう。
・規模の経済はもはやビジネスモデルを決定しない。
・経験経済では、採算性の高い、成功を収める企業は、顧客に経験や変身をもたらす
製品や商品を売る企業である。
・3Dプリンティングによって、人々は本業を続けながら、自分が創作した新製品の
市場可能性を探ることができる。 など、メイカーズムーブメントの先にあるビジネス
の変化、社会の変化がどのような形になるのか、を見る必要がある。
3Dプリンティングの利点はただ必要なものをプリントするだけでない。
製品を販売する際に、どのような形状が売れやすいかを調べるため様々な形の製品を
プリントして、顧客にどの形なら買ってみたいか訊いてみるなどといったこともできる
ようになるし、一体型でプリントすることができる利点を活かして組立てや輸送費用
といったコストをカットすることも可能となるのだ。3Dプリンタ技術の進歩は人々の
生活をより良いものにするだろう。
このように素晴らしい技術であるが、著者は実用的な3Dプリンタの実現には今回
書いた記述以外でも、様々な課題があるとしている。それは例えば複数の素材を
用いて無数のデザインを組み合わせる技術や直観的に操作することのできる
アプリケーションの開発、新たなデザイン規格の作成、知的財産権などの法的課題
などである。
だが、技術の進化を止めることは出来ない。複数素材でプリントする3Dプリンタ
などは限定的であるものの実用化されており、他の課題についても10から20年後
には解決されるとしている。

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