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2015年11月27日

2015.11.27

昨今の不安な世情、「文明の衝突」他から思う

昨今のイスラム原理主義を中心としたテロの頻繁な発生や中国の海洋進出に
伴う周辺国との小競り合い、EU内での分裂的な動き、などを垣間見ていると
ふと、久しぶりに「文明の衝突」を手にしたくなった。

この本は、サミュエル・P・ハンチントンが1993年に出した。
ハンチントンは、トインビーを参照しながら文明を以下のように分け、その間に
起こる争いが世界の今後を決定していくと言う。
すなわち、冷戦の終結に伴い、従来のイデオロギーの争いや経済上の争いに
代わり、文明の対立が主要な要因になっていく。
今後の世界は、西洋文明(ヨーロッパ文明と北米文明という二つ
の下位文明によって形成されているとされる)、儒教文明(中華文明)、
日本文明、イスラム文明、ヒンズー文明、スラブ文明、ラテンアメリカ文明
という7つ、あるいは,それにアフリカ文明を加えて8つの主要な文明の関係
によって規定されてゆく。
各国は、次第に、文明ごとの地域経済ブロックを形成してゆく。
① 西洋文明(アメリカ+西欧+オーストラリア)
② イスラム文明(中東+北アフリカ)
③ 中華文明
④ 日本文明
⑤ インド文明
⑥ ラテンアメリカ文明(西洋文明と近い)
⑦スラブ文明
⑧ アフリカ文明

そして、冷戦後世界にとって脅威となるのは、人口を急激に増加させながら、過激な
イスラーム原理主義を信奉するイスラーム文明と、経済成長著しい中国中華文明で
あり、アメリカはこの二つの文明に対抗するために、分裂傾向のアメリカとヨーロッパ
関係を一層強化し、日本文明などと結ぶ必要があると考えた。
そして、今後の戦争は文明の断層(フォルトライン)で起きるだろうとし、たとえ
文明間の小競り合いであっても中級国、大国が文明の観点から参戦することを余儀
なくされ、アメリカと中国の争いまでも言及している。

今後の世界は、「西洋対非西洋」、西洋の力と価値観に対する非西洋の反応を軸とし
て展開し、紛争の中核は、西洋対イスラム、儒教諸国との間で起こるという。
90年代は、西洋文明がその強さを謳歌していた時代であり、西洋の軍事力は比類
なき力を備え、経済面でも西洋諸国に挑戦できる国家は存しないと思われていた。
発表当初は様々な議論を生み、かなりの批判されているにもかかわらず、最近の
ハンチントンの提起が、本来の戦略論の意図を超え、参照され続けているのは、
冷戦後の世界においての「文明の衝突」というパラダイムの変更の提起がある種の
現実性を帯びてきているからであろう。それが、冒頭の最近の動きであり、特に
象徴するのがイスラム過激派による「西洋文明」への挑戦と中国の世界覇権
への動きであろう。

ハンチントンは、短期的に欧米諸国は、ヨーロッパと北米間の協調と統合を促進し、
西洋文明に近いところに位置する東ヨーロッパやラテンアメリカを西洋社会に
組み込んでいくべきと言う。さらに、ロシアや日本との協調関係を維持し、儒教、
イスラム国家の軍備拡大を抑制し、西洋の軍事力削減のペースを緩慢なものとする
ことが必要と言う。長期的には、非西洋文明諸国は近代化を実現したいと考えて
いるが、経済、軍事力が西洋的なものであり、その近代化を進めれば進めるほど
彼らに対する西洋の影響は増大してゆくこととなり、西洋諸国は非西洋諸国との
融合を心がけていかなければならず、西洋諸国は、他の文明に対して自らの利益を
確保するのに必要とされる経済、軍事力を今後も維持してゆく必要がある。

さらには、西洋文明はその絶頂期にあるが、そうであるがゆえに非西洋諸国に
おいては、自らの文明への回帰運動が起きている。西洋文明は、自らを
「どのような人間にもあてはまる普遍的な文明である」と考えたがるが、
普遍的な文明という考え方そのものが西洋的な思考であり、実際には、個人主義、
自由主義、立憲主義、人権、平等、自由、法の支配、民主主義、政教の分離と
いった西洋の概念が他の文明圏で広く受け入れられているわけではない。
西洋がこうした概念を広めようと努力すれば、多くの国は、反発を起こし、
固有な文化への認識の強化を高めるだけである。そのため、今後当面の間、
普遍的な文明は登場せず、むしろ多様な文明によって世界は規定されてゆく。
われわれに必要なのは、彼らと共存するすべをともに学ぶことである、
と考えている。
これ読んでいるとその発表後20年の世界の歩みと照らし合わせて見ても、色々と
考えさせられ、中々に興味を誘われる。

多分、この本を戦略論的な提起として読まむべきものであって、これを文明論××
として読むと過去に起きた多くの指摘に戸惑いを感じるであろう。
例えば、ヨーロッパとスラブは同じキリスト教なのにどうして別の文明にされている
のかとか日本はどうして儒教文明に入らないのかとか様々な疑問が出てくる。むしろ、
ハンチントンの想いが浮かれている西洋諸国(特にアメリカ)への警鐘と思えば、割合
すっきりと読めるのでは。

更に言えば、2000年初頭から拡大し始めたインターネットの影響を抜きにしては
これからの変化を正しく見ることは出来ない。それを概括的に見る点では、
「フラットな世界」は中々に面白い。

1990年代後半からのインターネットの進化を踏まえて、トーマス・フリードマン
が2005年に発刊している。そしてこの世界は更に深化している。
グローバリゼーションが広まり、世界がフラット化しつつある要素には、次の
10項目があると言っている。
①ベルリンの壁の崩壊とウィンドウズ
1990年のウィンドウズ3・0でアップル・IBM・ウィンドウ
ズ革命がおこった。「これで文字・音楽・数字データ・地図・写真・音声・映像が
すべてデジタル表示できるようになった。そのうち誰もがたいした費用をかけずに
デジタル・コンテンツを作り出すことになる。
②インターネットの普及と接続の自由
世界は本気でフラット化に向かった。
③ワークフロー・ソフトウェアと共同作業の実現
ここに「標準化」(スタンダード)という共有を求める価値観が生まれた。
④アップローディングとコミュニティ現出
アップローディングのしくみは、コミュニティを創りだし、「リナックス」
「ブログ」「ウィキペディア」「ポッドキャスティング」「ユーチューブ」
などが輩出した。
⑤アウトソーシングによる技術転移
フラット化された世界の技術はアウトソーシングの先に新たな技術と市場を
つくっていく。
⑥オフショアリングがおこった
⑦サプライチェーンが一変する
フラットな世界ではサプライチェーンが競争力と利益の根幹になっていくことを劇的に
示した企業が出てきた。
⑧インソーシングで世界が同期化する
⑨グーグルによるインフォーミング
グーグルが世界の知識を平等化した。
そこにはグーゴル(10の100乗)な数の人間がかかわれるようになった。
グーグルは、アップローディング、アウトソーシング、インソーシング、
サプライチェーン、オフショアリングのすべての個人化を可能にした。
これによって、「自分で自分に情報を教える」というインフォーミング
が可能になった。これにより、世界はますますフラット化する。
グーグルは更に先の変化に対応しようとしている。
⑩情報のステロイドホルモン化
「デジタル」と「ワイヤレス」と「モバイル」と「ヴァーチャル」と
「パーソナル」が掛け算されると、強力な情報のステロイドホルモン化がおこる。

更に、これらの要素を最適な形で有効に活用するには、以下の3つの集束
が必要となる。
1)グローバルなプラットホームが形成され、共同作業が可能となる。
これらを上手くこなす仕組み、
フラットな世界への接続可能なインフラ、
プラットホームを活用できる教育体制、
プラットホームの利点欠点を活かせる統治体制、
を構築できた国が先進的な活動と富、権力を得ることが出来る。
2)水平化を推進する力
水平な共同作業や価値創出のプロセスに慣れている多様な人材が必要である。
3)新たなるメンバーの参加
中国やロシアなど政治、経済などの壁により、参加できなかった30億人
以上のメンバーの参加が可能となった。

面白いのは、これらが実行されることにより、世界レベルでの変革となるが、
その基本は、「共産党宣言」に指摘されていることである。
「昔ながらの古めかしい固定観念や意見を拠り所にしている一定不変の凍り
ついた関係は一掃され、新たに形作られる物もすべて固まる前に時代遅れになる。
固体は溶けて消滅し、神聖は汚され、人間はついに、人生や他者との関係の実相
を、理性的な五感で受け止めざるを得なくなる。、、、、、そうした産業を駆逐
した新しい産業の導入が、全ての文明国の死活を左右する。、、、、、、、
どの国もブルジョアの生産方式に合わさざるを得ない。一言で言うなら、
ブルジョアは、世界を自分の姿そのままに作り変える。」

フリードマンの指摘は更に深化して社会、政治、経済まで大きく変わりつつある。
その深化する速度も年々加速化しているようにも思える。
これにハンチントンの想いを照らし合わせてみると、この道には素人である私にも、
面白く見えてくるのでは、そんな思いがする。

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