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2016年9月29日

2016.09.29

老々介護、高齢者の姿その2

これを哀しい話と思っていられる間はよいが、やがてわが身にも降りかかることだ。
寂しいが、この情景を受け入れながら残りの生きる時間を過ごしていくのだろう。
いつの間にか、ポーチの影が長く伸び切り、細く長い帯を朱色の壁に映しだしている。
窓辺のカーテンもその白さを赤い生地へと変え、部屋全体が燃えていた。
燃えるような陽の中で、妻と私は無言のままその炎の中で明日を思った。

多分、今描いた情景は、遅かれ早かれ私と妻にも及ぶ。
だが、「元気な高齢者」と言われる人々はメディアで話題となる「老々介護や漂流する
老人たち」より圧倒的に数は多い。

人がどれだけ元気で活躍できるかを知る目安に年齢がある。若いほど活動的で年を取
るほど健康を害し、周囲の助けが必要になる。だが寿命が延び、年を取っても健康な人
が増えるにつれ、一概に年齢だけでは人の元気度を測れなくなった。そこで人口学者の
間では従来のように何年生きてきたかで測るのではなく、あと何年生きられるかに着目
する動きがある。
例えば、1955年当時の日本人男性65歳は平均余命が約12年だったが、
2010年は約19年だという。年齢は同じでも2010年の65歳男性の方が元気で
活動的だと想像できる。逆に2010年時点で平均余命が約12年の男性の年齢は
74歳。つまり55年時点の65歳と2010年の74歳は同程度に元気だと
推定できる。

国立社会保障・人口問題研究所の金子隆一副所長は平均余命を基に高齢化の推移を分析
している。55年当時の65歳男女と同程度に元気と思われる年齢(等価年齢)を
歴年で算出し、その年齢以上の人口が総人口に占める比率を等価年齢高齢化率と定義
した。通常の高齢化率だと日本は急速に高齢化するが、等価年齢高齢化率でみれば
緩やかな上昇にとどまる。
「加齢による衰えは個人差が大きいので高齢者の増加をただ悲観するのではなく、
平均寿命が延びた恩恵を享受できるような仕掛けが必要なのかもしれない。
実際のところ、現在の60歳~70歳ぐらいまでの人たちは、以前の同年代と
比べてとても元気だ。力を持て余しているぐらいで何かしたくて仕方がない。
それが高齢者の高い消費行動となっている。

超高齢社会になると要介護者が急増するといわれるが、本当だろうか。
少なくとも74歳までの前期高齢者に限るなら、2025年の予測でも要介護者の
割合は4.8%に留まるようだ。ほとんどの人が74歳までは元気だ。
これを裏付けるのが健康寿命(自立した生活ができる生存期間)で、日本人の
平均は75歳と世界一を誇る。
(世界保健機構(WHO)が発表した数字は、男性72.3歳、女性77.7歳、平均75歳。
2012年に厚生労働省が初めて発表した数字は、男性70.42歳、女性73.62歳)

こうした高齢者の若返り現象によって、さまざまな変化が起こっている。例えば、熟年
離婚が増加しており、一方では事実婚も含む熟年再婚が1995年~2005年まで
の10年間で倍増している。一昔前なら70歳での恋愛などみっともなくてとても
表沙汰にはできないという認識があったが、もっともだラマなどではまだその傾向が
あるが。今はそんなことは誰も気にしなくなりつつある。高齢者の男女関係について
も従来の常識はもはや通用しなくなっている。

その反面、新たな問題も起こっている。熟年独身者の増加だ。団塊世代の18%が
独身である。そこで問題となるのが50代、60代男性のシングル増加だ。
男性シングルといっても80歳ぐらいなら、周りが何くれとなく気を配ってくれる
ので、万一の場合の発見も早い。これが50代~60代となるとまだ現役世代であり、
特に誰かが目を向けたりしない。
ところがその歳で独身生活となれば食事をはじめ生活は乱れがちだ。不摂生の結果、あ
る日突然、脳溢血や心筋梗塞で孤独死するケースが、これから続出するおそれがある。

一般的に高齢者が関心を持っているのは、「お金」と「健康」と「生きがい」だ。
彼らが求める生きがいとは、自分が“社会とつながっている証”である。
そんなテーマの本もあった。社会に役立つ活動をするために健康でいたいのであり、
自分が価値ある行動をしている裏付けとしてお金が欲しいのだ。

いずれにしろこれからは社会の意識も個人の行動も大きく変わる。
その中で、静かに前記の光景を迎えるのか、もう少し社会とつながりが強い生活を
選ぶのか、本人に託される時代でもある。ある人は、65歳から69歳までを
「後期現役」と位置づけ、その体力や智慧を活かすべき仕組み(生涯現役社会)
を作ることが縮小する日本には必要であるとも言っている。
今回は、寂しい話と楽しくなる話をした。

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