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2016.09.23

老々介護、高齢者の姿その1

人は、周りの変化にかなり鈍感だ。
わたし自身についてもそれは言える。
少し前になるが、ある新聞記事を2人で見ていたが、お互い自分にはあまり関係ない
と思って話している節があった。
その記事が言うには、
「高齢者が高齢者を介護する日本の現状とかを盛んに述べていた。
高齢化が進み、65歳以上が高齢の配偶者や両親を介護する「老老介護」が増えて
きている。
内閣府「平成二十六年度版高齢社会白書」によれば、要介護者等からみた主な
介護者の続柄は六割以上が同居している人であり、その内訳は、配偶者が25.7%、
子が20.9%、子の配偶者が15.2%となっている。また性別については、
男性が30.6%、女性が69.4%と女性が多いことがわかる。
要介護者等と同居している主な介護者の年齢をみると、男性の64.8%、女性の
60.9%が60歳以上であり、「老老介護」が多く存在していることがうかがえるそうだ。
その老老介護が多い理由は、
その理由としては夫婦や親子だけで生活する核家族が多いことや、「介護施設に
空きがない」「利用料金が高い」「他人を家に入れたくない」などの理由から
介護サービス(老人ホーム、訪問ヘルパー、デイサービスなど)を利用しない
介護者が多いと言っている。
また要介護者自身が「自宅で家族に介護されたい」と望むことが多く、介護者も
「介護施設に預けるのは抵抗がある」という思いから、老老介護を選択する
ケースもあるようだ。
そこでは「日常生活を送る上で介護が必要になった場合に、どこで介護を受け
たいか」の質問に対し、男性は42.2%、女性は30.2%が「自宅で介護してほしい」
と答えており、「介護老人福祉施設に入所したい(男性18.3%、女性19.1%)」
「病院などの医療機関に入院したい(男性16.7%、女性23.1%)」などの他項目
と比べ、最も多くなっている。
最近では 「認認介護」という介護者と要介護者の両方が認知症であるケースも
増え始めている。認知症患者数は2025年には七百万人近くに達するといわれており、
80歳頃で考えると十一組に一組の夫婦が認認介護に直面していると推測される」。
私は、誰に言うともなしに、「いやな世の中だね」と一言。
妻に「お前さん、どう思う」と聞いた。
「まあ、もう少ししたら私たちもそうなるのよ」
だが、あまり切迫感がない。
ちなみに私の周りを見ても、老人2人で生活している人が結構いる。
多分、彼らも私たちとあまり変わらない意識なのであろう。

たとえば、ある葬儀場の人の話が伝わってくる。
「今ふりかえってみても、胸がしめつけられる思いのする、
私が経験した「どうしても忘れられない葬儀」の一つをご紹介します。
後にも先にも、この一件がただ一度の経験でした…
お二人を同時に見送る葬儀、ご夫婦がご一緒に、亡くなられました。
ご夫婦はともに80歳を越えた老齢。
ご主人は自宅で寝たきりの状態で、奥様が懸命に介護をされている生活でした。
いわゆる「老々介護」の状態です。
80歳のお年ではご自分の身体だって壮健ではないため、もちろん奥様だけ
ではなくヘルパーさんの助けも借りながら、毎日を必死で乗り越えている
ご夫婦でした。
ご夫婦には一人娘しかおらず、しかも嫁いでいった先の義父母の介護に
手一杯という状況でした。
核家族化が進む現代社会で、このような一家は珍しい話ではありませんね。

ある日、いよいよ奥様の身体も心も負担が増え過ぎてきたため、ヘルパーさんの
訪問を毎日にしてもらおうかという相談をされました。
夕刻、そのお話を終えヘルパーさんが帰ろうとした時に奥様と交わした会話が、
「ありがとうございます~、来月から毎日手伝って貰えるようになると本当に楽になり
ます…今日はなんだか、ホッとしたせいか、ちょっと疲れが出てきたんで、もうお風呂
入って早く休もうかな。来月からよろしくお願いしますね。」
それが、奥様の最後の言葉と、なってしましました。
その晩、交わした言葉通りお風呂へ入られた奥様は、
浴室で突然の心臓発作に襲われ亡くなられました。
家の中には、気付いてくれる人も、助けを呼んでくれる人もいません。
ただ一人の家族であるご主人は、ベッドで寝たきりなのです。
奥様はそのまま浴室で冷たくなっていくばかり。
そして、奥様の介護だけが生きる術であったご主人も、やがてベッドの上で息
を引き取りました。
3日後に、ヘルパーさんが家を訪問された時、ようやくご夫婦が共に亡くなられている
のが発見されたのでした。

喪主を務めるのは、たった一人の娘様ですが、嫁がれた先での生活だけで
手一杯だった日常をふりかえり、それでももっと頑張れた事
があったのではないかと、もっと手助け出来ることがあったのではないかと、ただただ
後悔の思いばかりが募り、溢れる涙を止める術が無い…そんなご様子でした。
ご自分を責めて悔やむばかりの娘様でしたが、
葬儀の最後、参列者へのお礼のご挨拶へと立たれました。
「大切な父と母を、一度に亡くしてしまって、悲しくて寂しくて辛くてどうしようもな
い思いなのですが、ただ、今、二人の写真を見つめながら、少し、良かったな…とも感
じました。あれだけ仲の良かった二人なので、こうして一緒に旅立てることは、二人と
も寂しい思いをしなくて済むのですから、残る私たちは辛いけど、二人にとっては良か
ったのかな…と」。

これを哀しい話と思っていられる間はよいが、やがてわが身にも降りかかることだ。
寂しいが、この情景を受け入れながら残りの生きる時間を過ごしていくのだろう。
いつの間にか、ポーチの影が長く伸び切り、細く長い帯を朱色の壁に映しだしている。
窓辺のカーテンもその白さを赤い生地へと変え、部屋全体が燃えていた。
燃えるような陽の中で、妻と私は無言のままその炎の中で明日を思った。

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