« インターネットの次に来るもの、シェアエコノミーへの進化について | トップページ | 仏像と人の関係その二 »

2016.11.18

仏像と人の関係その一

私も含めて日本人はなぜ、仏像を拝しに来るのだろう。
多くの人は単に仏像を見るだけであり、印相や仏像の顔かたちについての
知識は皆無に近いのであろう。如来、観音、菩薩の違いさえ分かっているか
心もとない。しかし、陰翳のある祭壇に拝礼するだけで満足して終わる。
それは幼いころ、父母に連れられ、真剣に仏像に対峙している親の姿からの
心の習いだけなのだろうか。

曹洞宗の禅問答に以下のようなものがある。
仏像とは何か・・・?
月を(ゆび)さす指の如し。
その心は・・・?
月がわかれば指は要らない。
でも、月がどこにあるかわからない人には、その方向を示す道標なのだ。

日頃の生活の営みからこどものころ植え付けられた日本文化のDNAのようなもの
があるのかもしれない。
千年以上前、仏教が新しい神として大陸から持ち込まれた時の記述が面白い。

それは、日本書紀による「欽明天皇13年に百済の聖明王は「釈迦仏の
金銅像一躯経論若干巻」を贈ったとされることがその始まりなのであろう。
欽明天皇は歓喜し、
「西蕃のたてまつれる仏の相貌端厳にして、またら未だかって有らず。
うやまうべきや否や」
と問うた。
ここでは、仏を「蕃神(あだしくにのかみ)」と呼び、仏は新来の神の1つであって、
従来からの在地神と質的に相違するものと考えなかった。
また、天皇が仏法に心を動かされたのは、仏像の端厳とした輝きのためであり、
教えの内容にではない。

という。
さらには、原始仏教(人生の苦の原因である愛欲を断ち切ること)から大乗仏教への進化
を考える必要がある。大乗仏教では、もっぱら釈迦の存在を超歴史化、超人化して、
人間とは違う如来や薬師、大日、阿弥陀などの多くの仏を創りだした。これらのことにより、
仏教は、初めて宗教と言える形となっていった。この倫理的な仏教から宗教となった
仏教への変化の中に、像の成立が大きな役割を担っているのは否定できない。
今日、われわれが仏教というものを考えるとき、仏像を持った仏教を考える
わけであるがその仏経は釈迦仏教から大分変化したわけである。
超人的な仏に礼拝するという大乗仏教の思想があった。
これらが日常感覚的な想いとして
長く日本の中で醸成され、心根に深く刻まれてきた。

例えば、顕著な例が大正6年、和辻哲郎氏が奈良の古寺の仏像の美に感動し、
「古寺巡礼」を書きヨーロッパ的教養で仏像を見る新しい仏像観賞の道を見せ、
彼のその後の日本文化への関心がその仏像との出会いによって決定されたと言われる。
その和辻哲郎の「日本精神史研究」にはそれが明確に描かれている。

「上代における日本人は、ただ単純に、神秘なる力の根源としての仏像を礼拝し、
現世の幸福を満たすものとしての意識程度であるが、現世を否定せずして、
しかもより高き完全な世界を憧れる事が、彼らの理想であった。
現世は、不完全との認識を持っているが、憧憬するのは、常世の世界
であり、死なき世界である。
この時代において、仏教が伝わり、今までの「木や石の代わり」に今や
人の姿をした、美しい、神々しい、意味深い「仏」がもたらされる。
魔力的な儀礼に代わりに今やこの「仏」に対する帰依が求められる。
一切の美的魅力がここでは、宗教的な力に形を変えるのである。
さらに、最初に来た仏教が修行や哲理を説くようなものではなく、
むしろ、釈迦崇拝、薬師崇拝、観音崇拝の如く、現世の利益のための
願いを主としたことが幸いであった。
また、このような意識は、単に、芸術に関してのみではなく、
日本人の内的生活、思想の進展、政治の発達にも、大きな要素
となって行く。生活文化にも、同様のことが言える」
という。

仏像には、如来像から発して、「地蔵菩薩」「弥勒菩薩」「観音菩薩」、など様々な
かたちで現世の利益を与えるとの思いで我々は区別なく拝している。しかも
本地垂迹という理屈付でまさに神も仏も区別さえ怪しく崇拝されている。
つまり神と仏の類別意識はないのである。「神・仏」としてのみ意識する
ということで、「神も仏も一つ」というような扱いになっていると言える。
これが日本人の「宗教感覚」なのであり、日本人にとっては「神々」も「仏たち」も
要するに「繁栄をもたらし」「成功をもたらし」「災厄を除去し」「平安をもたらす」
そうした力、ようするに自然の中に生きている人間に対しての「根源としての自然的力」
の形象化であったということなのかもしれない。

« インターネットの次に来るもの、シェアエコノミーへの進化について | トップページ | 仏像と人の関係その二 »

人生」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/79186/64509540

この記事へのトラックバック一覧です: 仏像と人の関係その一:

« インターネットの次に来るもの、シェアエコノミーへの進化について | トップページ | 仏像と人の関係その二 »

最近のトラックバック

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ