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2017年1月27日

2017.01.27

空き資源への想いその2

端的に「空き家再生」と表現される場合でも様々な要因がある。単独の空き家や、専用住宅
だけを対象とするものではない。以下のような幾つかのポイントがある。

・「敷地主義」という限定されたものではなく、地域の抱える社会的、経済的な課題の
解決を図る。
・オフィスや店舗ビルの空きフロア、利活用の進んでいない公共空間など、「遊休不動
産」全般を対象とする。
・大家(不動産オーナー)と店子(ビジネスオーナーや居住者)、および両者の間
をつなぐ新しい職能が、それぞれリスクを分担し、相互協力して地域の不動産価値を
上げるための仕掛けを考える。
・補助金に頼らず融資や自らの出資を基本とし、ハードよりもコンテンツ(中身)重視
で持続可能な事業計画を考える。
・地域の活性化は総合的現実的な対応が必要であり、様々な分野の人々の連携の仕組みを
考える。例えば、建築、不動産、デザイン以外に、マーケティングやメディア、法務や
財務など会社経営に関わる専門家、IT分野の起業家、劇作家など多様な領域を横断する場
造りを行う。
現状では、建築の専門家、不動産の専門家といったプロフェッショナル同士のつながりが
薄く、まちづくりの場合、そうした境界を越えて自分には『関係ない』と思っていた
世界に少し足を踏み入れる必要がある。

さらに、多くの成功事例では、「いかに当事者になれるかだ」というようなその地域の人の
かかわりの強さのようだ。こんな言葉もある。
「従来いわれる計画者や設計者というのは、計画するだけ、設計するだけの人。それ
で、使う人に『はい』って手渡して終わる。自分も含め、まちづくりや建築に関わる人
は、それが普通だと思い込んでいた。でも、普通だったのは、ほんのこの数十年。それ
より以前は、企てた人間がつくって、そのまま使うのが普通だった。
自分で企て、自分でつくって、その同じ人が店なりシェアオフィスなりを始めるのでも
全く構わない。なんで分けているんだろう?と最近では思う。ある人が大家になった
瞬間に周りの大家さんが自分の話を聞いてくれるようになった、と言っている。
象徴的なエピソードで、それは当事者になったから。計画者や
設計者として、よそよそしくまちと付き合うのではなく、当事者になる。そういう関係
をまちや建物と結んだ瞬間に、それまでと違うスタンス、違うクリエーティビティが生
まれる。

大分昔、京都北部で若い人の移住推進、空き家の活用など地域の活性化を支援したこと
があった。私は企画やIT関連の開発支援をしたが、地域内の様々な分野の人も集まり、
軌道に乗ったと思ったが、2年後には解散になった。
この活動を主体的に推進していた2人がそれぞれの事情で地域を離れ、それを継ぐ人が
いなかったのが主因であった。
やはり最後は人だ、その反省はいまも残る。さらには、そこに住んでいることが根本に
なければならない。

社会状況としては、「地方移住が過去5年で4倍になった」という大きな流れもある。
わたしの周辺でも数人の若い人が東京から戻ってきたり、この自然の良さの中で、
生活したいというひとも少なくはない。
毎日新聞とNHK、明治大学地域ガバナンス論研究室(小田切徳美教授)の共同調査によ
ると、2014年度の地方移住者数は1万1735人で、2009年度からの5間で4倍
以上に増えている。岡山県、鳥取県、長野県、島根県、岐阜県の上位5県で全体の
48%を占めており、長年移住促進に取り組む地域とそうでない地域の格差が
拡大している。東北や近畿は移住者が少ない。
さらには、都道府県をまたぐ転居を行った転職者は、転居先が「過去住んだことがある地域」
「友人・知人のいる地域」「縁もゆかりもない地域」で約3分の1づつとなっている。

最後に幾つかの事例を見ていく。
・北海道、十勝平野の東北部に位置する本別町。
農業や酪農が盛んな人口約7400人の小さな町は、全国に先駆けて、福祉の観点から
空家の利活用を進めている。町内の空家を地域の資源と捉えて、空家所有者に改修を促し、
住み替えを希望する高齢者に低価格の賃貸住宅として貸し出すという試みだ。
例えば、農村部に住んでいた高齢者が、より生活利便性が高く福祉施設も多い中心市街地
の空家に住み替えをする、といった事例が生まれている。
・鳥の劇場は、鳥取市鹿野町で、使われなくなった小学校の体育館を劇場に改修し、10年間
活動を続けている。田舎の廃校に演劇集団がやって来てから10年。がらんどうだった体育館は、
住民に愛される劇場へと生まれ変わった。廃校とは、「地域の歴史や人々の思いが詰まった場所」。
NPO法人「鳥の劇場」は、地方から演劇の可能性を広げ続けている。

他にもシャッター通りににぎわいを戻したり、廃校を地域の図書館に改装し若い人や年寄りの
憩いの場所にしたり、その事例は年々多くなっている。だが、それが社会全体の大きな
うねりとなってきたとは言えない。

現代の都市論に大きな影響を与えたジェイン・ジェイコブズが都市計画のポイントを
4つほど論じているが、そのうちの2つは十分噛みしめる必要がある。
・古い建物が出来るだけ多く残るような再開発を進める。
・都市の各地区は必ず2つ以上の機能をもち、多様性を高める。
再開発が進み、均質化する都市の中で、昔から存在する建物は、地域に活力をもたらす
源泉になり得る。効率化社会の実現を優先とした公共財への投資と便利さのみを優先させた
行政手法がまかり通る現状だが、単に古くなったからというだけで壊していくことが
最善なのか、空き資源の増加はそれを問うてもいる。

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