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2017.10.27

台風の来た日

ここに移り住んで20年、これほどの風が吹き荒れた記憶はない。
元々このあたりは「比良おろし」と言って時には、電車まで止めてしまうほどの
風が好き放題に森や雑木林、家々を撫でまわしていくのだが、今回のはだいぶ
様相が違った。
前日から家を揺らしつづけている。
家全体がその風の凄さに悲鳴を上げていた。夕刻から始まった風は一夜明けても
止むことなく、周囲の家や街を取り囲むように生い茂る雑木林を左右に前後に
こねりまわしている。
眠りが浅くなると、その耳をほじくり返すように頭の奥まで、侵入してくる。
朝5時半ごろでああろうか、起きて机に座ると、まだ大きな暗闇がすべてを
隠し覆っていた。何も見えない暗闇というのは、これか。変な納得感の中で、
暫くはぽつねんと机に座っているだけだった。
突然、眼の間の暗闇が裂けた。その先には、比良の山並みの薄く見える頂に
黒く重たそうな雲がずしりとした威容で乗っていた。比良そのものがその
重さに悲鳴を上げている姿にも見えた。
やがて、薄明るい世界が暗闇を追い払っていった。

だが、いつもみる世界と何か違うと私の心が囁いている。
よく見れば、街灯を含め、すべての人工の光が見えていない。停電が起きていた。
時折、光の筋がゆっくりと流れていく。車で仕事に出かける人なのであろうか。
だが、それ以上の変化、それ以下の変かも起きない。無音と無明の世界のみだ。

停電は、その後も続き、西日が周囲を、台風の爪痕を四方に残した、赤く染める
ようになっても、続いた。やがて、赤や橙色光が薄暗闇に抱き込まれる時
となっても、変わらず、我が家は闇が支配していった。わずかの懐中電灯と
蝋燭の光の中で、息を殺すかのような時間が始まった。蝋燭の火影が天井に
不規則な影を揺らめかせている。これも楽しいものだという心と食事が
まだまだという肉体的な要求が微妙に揺れ出す。
突然、家の中が光に満ち溢れる。
先ほどまでの感傷はどこか遠くへと飛んで行っていた。

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