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2018.01.14

不思議な世界その4

しかし、その動きは突然止まる。
一瞬の静寂が四方を取り巻くが、それも束の間にまた動き出す。初めはその急激な動と静に
その場に立ち尽くしたままであったが、やがてそれがい体のリズムを持っていることで安心した。
だが、それも一刻のことで赤く照り映える光の中で先端の球状が崩れて網目状の袋のような形
になっていく。小さな粒子がその袋に集まり透明な袋、それはまるで薄透明のゴムの袋が
膨らんだ形で、となっていく。その袋が伸び切った管の彼方こちらで作られていく。まるで、
子を宿した母の如き優しさが周囲の空気を柔らかくしていく。彼らの子供が胞子となってさらに
その命を次へと受けつなぐための行為を私はそのただ中で見ているのだ。

黄色や灰色に彩られたカタホコリやウリホコリが周囲の草の幹を這い上がり始めるのが見えた。
自分たちの子供たちを風に乗せて如何にと奥へ広げるかを考えているようでもある。
だが、考えてみると彼らは生物ではない。この知恵は何処から来ているのだ、目まぐるしく
変化する彼らの動きは私に混乱と驚きを与えていくばかりだ。
赤い世界がその色を失いつつある中で、私はしばらく休むことにした。
これ以上の変化に身体も頭も順応できなくなっていた。

同じ背丈の茸の群生があった、不思議な気分だ。その中で横になると茶褐色の笠の下で
寝ているような気分になった。小さな胞子が銀粉を巻くように薄暗がりの僅かな光に
映えて舞っている。それは雀たちが何かの拍子に一斉に秋の刈田の上を群れ飛びまわる
雲蝦の如き姿にも似ていた。わずかの空気の流れに反応して時に渦を巻き、また広く網
のように拡がり、更に一筋の黒糸となって天に向かって伸びていく、様々な形を成して
やがて地上へと煌めきを帯びて舞い落ちてきた。その中でわたしは深く沈んだ。

暗い闇が私を包み、さらに深い眠りの世界へと誘っていった。生暖かな感触が私を包んでいた。
見れば、黄色の網のような群れが周囲の茸を包み始めていた。彼らはあるものは
キノコの太い幹をよじ登り、笠まで達するとそれもまた黄色の網で包んでいく。
私は彼らに嫌われたのであろう。私を避けるように黄色の世界が茸の林を覆い始めていた。
暫くすると茸は融けはじめ、ぶつぶつといった音を立てながら崩れ平板な塊になった。
カタホコリが摂食し、その成長を早めている。思わず私は身震いをした。
もし彼らの好みが私に向けられていれば、私も同じように黄色の網となり、やがて死骸と
なってこの地の一部になっていたかもしれない。既に先ほど見た茸の群生は
跡形もなく消え去り、黄色の平板な世界に変容していた。

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