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2018.07.08

西近江路紀行10 比良と小松ま

西近江路紀行10 比良と小松まで

比良や南小松の周辺に拡がる森のたたずまい、志賀の魅力を
感じて移り住む人も多い様だ。

ある陶芸家と木工作家、画家の想いを聞くと、それがよく分かる
・ある陶芸作家の想いより
琵琶湖の自然は「インスピレーションの源」である。
眼下に琵琶湖が一望できる工房からは、毎日異なった「空の青」
と「湖の青」が広がっている。この風景が作品に大きく影響している。
琵琶湖の白波に感動しては青磁に白い線を入れ、命の源である
「水」を表現する。
大自然と対話を繰り返しながら作品作りを進めた。
作品は徐々に評価され始めたが、まだ失敗を繰り返すことも多く、
技法に限界を感じかけていた2005年、日本伝統工芸展に
出品した作品が、宮内庁買い上げとなった。「何か大きな力」
が自分を後押ししてくれるように感じました。
これからも人に力を与えられるものを作りたい。
願わくば、焼き物への関心が低い人へも」

・桶職人と言うよりか、木の工芸家の方は、
比良工房で製作している桶は、大きな檜などの原木から作り
上げていきます。材木屋さんから丸太で届いた木は、割る
のにも一苦労。小さなぐいのみも、おひつも、まずはこの
作業から始める。
大人がしゃがんだ高さほども直径がある木か形を創って行きます。
ここまで育つのに、どれくらいの年数がかかったのでしょう。
「樹齢と同じ年数使える桶を作れ」祖父の言葉です。
そして、この志賀の自然環境が私の作品つくりには欠かせない
もであり、京都からこの地に来た成果であります。

この2人の想いと同じ様な自然に魅了された人々が志賀の北部
に居を構え、地域の中で、自身の作品などを創作し、見せること
になどで日々の生活を営んでいる。
例えば、
歴史や文化、伝統をになって代々暮らし続けてきた者、この地
に魅せられ移住してきた者、ギャラリー・工房を構え創作活動
する者。さまざまな人々が手をとりあって、元気な比良を発信
することを目的にして、普段は公開していない作家の工房や
アトリエを開放したり、ギャラリーなどでは地域にちなんだ
展示をしたり、他にも比良の子供たちの絵画展や比良にゆかり
のある作家たちの作品展、一般参加型のスケッチ大会、歴史散策、
里山コンサートなどを催している。
菓子工房、カフェ、地元食材のお弁当の美味しい店、アウトドア
の店、幾つかの陶芸家の店、庭工房、日用品の工房、アンティーク
ハウス、アトリエ、など琵琶湖と比良山系にはさまれ、人々の
暮らしと自然が融合した地域の作品やもてなしをしている。
びわ湖に比良山脈がせまる細長い土地、それがこの比良。
そこには雑木林があり、里山の生活もある。
今では珍しくなったしし垣といって獣と人間が住み分けをする
ために作られた石垣も残されているような土地なのだ。

琵琶湖周辺でも、湖西と湖北は、まだ古きよき日本の原風景を残している。
更には、生活の中に琵琶湖と比良の山並が滑り込んで、その古さ
と新しさの調和を活かしている場所でもある。多くの古代文化の
遺跡や古墳など形あるものは、数百年の時により、消え去り埋没
したかもしれないが、人をベースとする文化は継続して残っていくし、
その自然も他に比べて生きている。

さらに、このあたりから満月の夜に琵琶湖を見回した光景が泉鏡花の
「瓔珞品ようらくぽん」の一節に幻影的に描かれている。
もっとも、この情景は琵琶湖の東側から臨んだものであるが、
満月の夜、雄松崎や小松の浜辺からの光景も同じように鑑賞できる。
「琵琶湖の夜の美しさに魅了された主人公が何度となく琵琶湖を訪れる。
天人石を探したり、夢の中で鮒になったり、無限の世界を体感する。
「水を切る船端の波の走るのが、銀を落とすと、白い瑠璃の階きざはしが、
星を鏤めてきらきらと月の下へ揺れかかって、神女の、月宮殿に朝する
姿がありありと拝まれると申します。」「霜のように輝いて、自分の影の
映るのが、あたらしいほど甲板。湖水はただ渺茫として、水や空、
南無竹生島は墨絵のよう。御堂の棟と思い当たり、影が差し、月が
染みて、羽衣のひだをみるような、、、」と夜の湖水を表現している。
瓔珞は仏像の胸や頭を飾る飾り。石山や彦根、竹生島などが背景にある。
更には、
「前後に松葉重なって、宿の形は影も留めず、深き翠みどりを一面に、
眼界唯限りなき漣さざなみなり。この処によずるまで、手を縋り、
かつ足を支えた、幹から幹、枝から枝、一足ずつ上るにつれて、
何処より寄することもなく、れん艶たる波、白帆をのせて背に近づき、
躑躅を浮かべて肩に迫り、倒さかさまに藤を宿したが、石の上に、
立ち直って、今や正に、目の下に望まれた、これなん日の本の一
個所を、琵琶にくぎった水である。
妙なるかな、近江の国。卯月の末の八つ下がり、月白く、山の薄紅、
松の梢に藤をかけ、山は翠の黒髪長く、霞は里に裳もすそを曳いて、
そよそよとある風の調べは、湖の琵琶を奏づるのである。」
だが、ある人に言わせると、冬の夜の琵琶湖の満月が好きだ、という。

昨日からまた雪が降り出し、比良の山も湖も灰色と白く舞う雪の花に
ひっそりと見え隠れする。
白く輝く光りを浴びた湖面は三角錐の八幡山と皿を伏せた沖島の島影を
浮き立たせ、細かな波状のつらなりが丸く輝く月の下で揺れかかっている。
雲一つ無い闇天の空に神々しく輝く満月がその様をのぞき見ている。
山と空、水、沖舟にさす影、羽衣のひだと思わす波のはしり、それが
墨絵の趣で眼前にある。
彼は、凍えそうな手に己が息を吐きかけ、闇に身を置いていた。
湖水は寂寞として何も言わず、橋を渡る赤いいくつもの筋のみが
消えてはまたその緩やかに伸びる赤い帯を現していた。
さらには、湖北の雪の残り香であろう雪の切片が湖に薄く舞い落ち
月光に染められ、銀砂をまいているように湖水の面に踊っていた。
湖面も月光に染められ銀色の波がひろがる上に小雪が舞い落ちている。
だが、月が雲にかき消されると平板な重く澱んだ水面となり、
すべてが凡庸な湖の世界となる。
いずれにしろ、四季の中で満月に出会うことがこの地をあらためて
記憶にとどめることになる。

西近江路は、楊梅の滝に水源を持つ滝川を越え、樹下神社の前辺りで
国道と分岐する。右側の狭い旧街道に入る。旧街道には、北小松の
集落の家並みが細長く続き、道の左に溝をとるなど街道の面影を
よくとどめている。
この集落の右側には、すぐに琵琶湖に接し、古くから小松津とよばれ、
湖上輸送の船着場として知られる。「堀川後百首」にも「さざなみや
小松にたちて見渡せば、みほの岬に田鶴むれてなく」の歌がある。
そして北小松は水陸の輸送の便に恵まれ、明治13年当時は船63隻
旅籠が七軒もあった。

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